正直なところ、コンサルタントとしては「マーケティング調査なんか、誰がやるもんか」という気持ちでいます。とくに得られるサンプル数に限りのある中小企業にとって、中途半端なマーケティング調査は新製品の発売日を遅らせるだけの障壁でしかないケースすらあるのです。
昔は、日本の企業もよくカネをかけてマーケティング調査をしたものです。とくに外資系企業が好むため、よいマーケティング手法と捉えられていました。しかし、その結果の有効性は非常に疑わしい。
例えば、“グルイン”。ターゲット層のモニター被験者を数人呼び、グループ・インタビューを行うものですが、主婦やOLなど女性同士の場合、お互いが妙に牽制し合い、見栄やうそを含んだ発言が支配的になったりします。
「この商品が5,000円だったら買いますか?」との質問に、「ええ、これだけ便利ならぜひ買いたいわ」と答えるけれど、実際は買いやしないのです。ウチは家計に余裕があってよ、と言いたいだけだったりするのですね。あるいはインタビュアーの性別や年齢によっても結果は違ってくる。もしもインタビュアーがイケメンなら主婦も財布を開くふりをするのです。
「多少、高くてもリサイクル素材の商品を買いたい」と70%が答え、「リサイクル素材ではなく安価な商品を買いたい」と30%の人が答えたとします。しかし、実際に割高な商品を買う人は70%もいるでしょうか。
以前、弓削はスターバックスの店頭で簡単なアンケート調査を受けました。しかし、質問者はたったいまスターバックス・ラテを淹れてくれた人。お客さんは店頭のサービスが良くないとか、テイストがいまいちだとか、床にゴミが落ちている、などと言えるでしょうか。私は、言えませんよ。
だいたい、調査に回答する消費者が、自分の欲しいものをきちんと思い描いて日々を暮らしているわけではありません。ソニー創業者の盛田昭夫氏は「マーケットの調査は必要なかった。大衆は何が可能なのかを知らない。それを知っているのはわれわれのほうだ」と語っています。
また、出版業界では、「読者の声を採り入れはじめた雑誌は早晩、休刊になる」という言い伝え?があります(「休刊」とは業界用語で実質的な廃刊のこと)。
「消費者に意見を聞くなど、バックミラーを見ながらクルマを走らせるようなものだ」とは、ロバート・ラッツという信奉者の多いマーケッターの言葉。
あるいは、ゼロックス社の事例。まだ湿式コピー機しかなかった時代、現在では当たり前の、しかしコストの高かった乾式コピーが受け入れられるかをゼロックス社はマーケティング調査しました。
その結果は圧倒的に「安価な湿式コピーをやめてまで買いたくはない」という反応でした。しかし、ゼロックス社はあえてこの調査結果を無視し、乾式コピー機を発売しました。その判断が正しかったかどうかは、いまや問題にもなりません。
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