富士Q・ひらパー:ポジショニングマップで描けないその魅力

2009.01.06

仕事術

富士Q・ひらパー:ポジショニングマップで描けないその魅力

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

ポジショニングは、ターゲット顧客のアタマの中にいかに明確に自社の商品、もしくはブランドの魅力が明確に描き出せるか。競合と比べていかに優位に見えるようにするかという点が勝負のポイントだ。その魅力の明確化や競合優位性を表すために、マーケティングのフレームワークである「ポジショニングマップ」が用いられる。 しかし、当然ながらポジショニングとは、ポジショニングマップを描くことが目的ではない。

ひらかたパーク 「キャラクター”ピピン”シリーズ」(CM動画をご覧ください)
http://www.hirakatapark.co.jp/tvcm/

東の富士急ハイランド(通称・富士Q)、西のひらかたパーク(通称・ひらパー)、どれだけディズニーリゾートがきらめこうが、どれだけユニバーサルスタジオが華やごうが、まったくどうでもよいと主張するかのような見事な世界観が伝わってくる。

ディズニーのポジショニングが、「夢と魔法の王国」であるということは、ほとんどの人々に伝わっているだろう。
ユニバーサルスタジオに行けば「ハリウッド映画の体験」ができることも広く知られている。
東西の両雄は、有形・無形の”テーマパークとしての世界観”の構築と実現には、とてつもない予算をかけている。しかし、富士Q、ひらパー、ふたつの遊園地は、まぎれもなく遊園地。テーマパークではない。
あえて、コトバにするなら、「とてつもないライドでの体験」を約束する富士Q、「キャラクターが導く、日常的な非日常」となるのではないだろうか。

全国各地にある遊園地。「テーマパーク」と称してはいるものの、実質的には「ただの遊園地」であるものも多く、経営的に苦戦しているところも多いと聞く。
どこでも、似たようなライドが設置され、同じようなイベントが繰り返されているのだろう。各々工夫はあるものの、富士Q、ひらパーも遊園地である以上、それらと類似点があるのは否めないだろう。
しかし、そのオリジナリティー溢れるポジショニングと、そこから発せられる、ターゲット顧客(来場者)に対し、期待させるものの明確さは見事だと言えるだろう。

長引く景気の低迷によって、モノもサービスも売れなくなっている。
その魅力を明確に伝えることができなければ、市場からの退場を余儀なくされるのは間違いない。そのためには、単なるフレームワークをいじくるだけでなく、明確なコトバに変え、さらに世界観まで伝えることが必要なのだ。
マーケティングの大家、フィリップ・コトラーは「セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング(STP)」という、マーケティング戦略策定の要諦となるステップの総仕上げとして、また、マーケティング戦略全体の流れの中で、「ポジショニング」は最重要事項であると明言している。
自社のポジショニングは明確か。魅力は伝わっているか。顧客をその世界観にまで巻き込むことができているのか。もう一度見直してみることをお勧めしたい。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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