もし、「褒めることは重要か」と問われれば、「否定するよりはいいけど、重要だとは思わない」と答えるでしょう。
先日、都内の大型書店のコーチング関連のコーナーを覗くと、亜流本も混じる棚の中に「ほめる」ことにフォーカスした書籍は多いことが気になりました。
そういえば、雑誌レベルのコーチング特集を読むと、「コーチングとは褒めること」といった論調が多いように思います。
これだけ褒めることがフィーチャーされれば、人材育成や対人コミュニケーションの中で褒めることが重要とする風潮が広がっても当然かもしれません。
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ところで皆さんは、褒めたり期待するメッセージを相手に伝えたのに、思ったような効果がなかった経験はありませんか。
「よく頑張ったな」
「なかなか、スゴいじゃない」
「キミには期待しているから」
これらのメッセージは、相手のモチベーションを高めるといわれいますが、一面では、相手を評価するメッセージでもあります。
「どうして、アンタにそんなこと言われなければいけないんだ」
「アンタの言っていることは見当違いだ(間違っている)」
「おだてて、何を企んでいるんだ」
こんなふうに思われたら逆効果です。褒めないほうがマシということになります。
褒めることが効果的なのは、良好な人間関係が形成されていることが前提になります。褒めるよりも前に関係改善が必要な場合もあります。
私は、巷で奨励されている「褒める」というのは、傍観者の視点のように思えてなりません。第三者からは、上司が部下を褒めているように見えたとしても、当事者の上司自身は「褒める」ことを殊更に意識する必要はないと思います。
それでは、上司は「褒める」ことを意識せずに、何を意識すればいいのでしょうか。
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◆聞く
◆質問する
◆承認する
多くの人がコミュニケーションの重要なスキルとして、この3つを取り上げます。この中でも、褒めることが推奨されるようになったのは、承認するスキルが関連しているようです。
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コーチングは、米国で優秀なコーチやマネジャーのコミュニケーションを観察し、それを体系化したのが始まりです。英語で記されたコーチングの原典を日本語に翻訳する際に、微妙なニュアンスが歪められてしまうことは避けられません。そこで、承認するスキルを原語に遡って考察してみましょう。
承認するスキルは、英語で acknowledge(アクノレッジ) と記されています。
ロングマン現代英英辞典によると acknowledge には次のような意味があります。
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