前稿に引き続きCMISの概要紹介をしていきます。今回はCMISのモデルにおけるデータタイプを説明します。
少し間があいてしまいましたが、CMIS(Content Management Interoperability Service)の内容紹介を続けたいと思います。前稿では、CMISがどのような利用のシーンを前提として策定されているのか、という話題を中心にご紹介しました。本稿では続くメソッドレベルでのAPIの解説の前提知識となるデータモデルについてご説明します。
CMISではいわゆるフルスペックのECM製品で取り扱われるオブジェクト群のすべてが規格化されているわけではありません。たとえば追加開発用のインターフェースに使われるトランジェント(永続化対象外)なエンティティや、ユーザプロファイルのような管理目的のエンティティ、ヴァーチャル文書やビジネスプロセスそして購読などの付加価値的な機能であつかわれるエンティティもスコープ外になっています。
リポジトリ
ECM製品毎にリポジトリの実装方法は様々です。したがって、CMISにおいては最上位概念であるリポジトリについてもすべての機能を網羅することを求めてはいません。例えば以下に挙げる機能は"オプショナルな"ものとして取り扱われます。また、当該リポジトリがこれらの機能をサポートしているかどうかは、getRepositoryInfoサービスによって通知されなければなりません。
・文書(あるいはフォルダに格納可能なその他のオブジェクト)を複数のフォルダに格納する機能。マルチファイリング。
・文書(あるいはフォルダに格納可能なその他のオブジェクト)をどのフォルダにも格納しないまま保持する機能。アンファイリング。
・文書の特定のバージョン(群)だけをフォルダに格納する機能。バージョン指定ファイリング。
・チェックアウトされた文書のワーキングコピーを更新する機能。ワーキングコピー編集。
・最新版ではない文書もスコープに含めた検索機能。全バージョン検索。
・チェックアウトされた文書のワーキングコピーもスコープに含めた検索機能。ワーキングコピー検索。
・検索クエリのサポート。「なし」「メタデータのみ」「全文検索のみ」「両方」
・クエリにおけるジョインのサポート。「なし」「インナージョインのみ」「インナージョインおよびアウタージョイン」
・全文検索サポート。「なし」「全文検索のみ」「全文検索と属性情報の組み合わせ」
これら機能のサポート状況だけでなくgetRepositoryInfoサービスからは関連するその他のリポジトリへのリンクを得ることもできるようになっています(規格上はMAYと表現)。CMISにおいてはリポジトリは単一のものではなく、いくつものリポジトリが併存する状況が前提となっています。getRepositoriesサービスによってアクセスの対象となりえるリポジトリの一覧が取得できます。上記の関連する他のリポジトリの一覧というのは、そのサブセットになります。また、getRepositoryInfoサービス以外でもgetTypesサービスやgetTypeDefinitionを利用してリポジトリについての情報を取得することもできます。
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ようやく策定されたECMのための共通言語 CMIS
2009.06.15
2008.10.17
2008.09.26