最近、人材開発の分野でも「メンタルヘルス」という言葉を耳にする機会が増えてきました。今までは、医療的な見地からこの問題に取り組んでいたようですが、成果を得るどころか、企業を取り巻く環境激化とともに、メンタル不全者が続出し、個人の問題では捉えきれなくなってきているのです。
まずは焦点の当てる方向性を変える必要があります。
メンタルヘルス不全の結果として起こる代表的な症状であるうつ病を精神病と捉えると対症療法的な取り組みに終始してしまいますが、精神的不健康と捉えると既に症状が現れている人は勿論のこと、今後の発生を予防する取り組みまで明らかになっていきます。
精神病と診断されたとき、人は良くなろうという気がないのではなく、良くなりたいと願うがそのためにどうして良いかわからないだけなのです。しかし、自分は精神病ではないということ、そして、今よりも気分よくなれる方法があるとわかると、努力し続けるための動機付けにもなっていきます。
つまり、企業自体が精神病という観点から取り組むことを止め、精神的不健康という観点から施策を打ち、精神的健康になる方法を情報として提供することと、精神的健康を維持するために適した職場環境創りや組織風土の改善を進めていくことです。
実際にこの取り組みを進めている企業の多くでは、単なるメンタルヘルス対策にとどまらず、組織の開発、ひいては組織の成長・発展にまで至っています。
何故なら、メンタルヘルスを単なる個人の問題と捉えるのではなく、対象を個人から管理監督者、そして組織まで拡げているからなのです。要するに、マネジメントとメンタルヘルスを融合させ、その両面からメンタル不調の予防策や対応策を講じる総合的なアプローチによる解決を図っているのです。
この様に、セルフケアからラインケア、そしてチームケアまで視野を拡げた一貫した対策が組織開発まで至らしているのです。
こうした取り組みは一見多大なエネルギーを要するようにも思われがちなのですが、セルフケアの段階で当事者が自律性を持ち取り組んでいくことで、ラインケア、チームケアへの流れが出来上がっていくのです。敷居は高くありません。
では、具体的にはどの様に進めていくと良いのでしょうか。
メンタルヘルス対策を進めていく上で最も重要な概念が「ストレス」です。
このストレスはネガティブに捉えられることが多いのですが、実は適度なストレスがあるからこそ人間の努力が生じ、動機付けがなされるのです。適正なストレスが健康と生産性を向上させるのです。まずはストレスを前向きに捉えることが重要です。セリエは「ストレスは人生のスパイスである」と言っています。
次に重要なのは、自己のストレス耐性を知り高めることです。ストレス耐性とは、ストレスをどの程度コントロールできるかということですが、ストレス耐性を高めることは意識の持ち方によるものなので、NLPの個人編集テクニック等の心理学的手法を使えば容易にできます。
そのうえで、身近な人間関係の改善から自己目標の達成まで視野に入れた行動変容を自ら促すことが精神的健康への第一歩になります。
本来、個々の取り組みと並行して、上司による適切なケアと適切な会社の施策が求められるのですが、個々の取り組みが上司や会社へと波及していく場合も少なくありません。
さあ、あなたもストレスの本質を理解し、自分のストレス耐性を知り、行動変容を促すことで、精神的健康への第一歩を踏み出してみませんか。
(再掲)
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2010.03.20
2015.12.13
松本 真治
有限会社ワースプランニング 代表取締役
人材・組織開発コンサルタント。 人材・組織の潜在力を引き出すアセスメント(サーベイ)の企画/開発/運用から本質的課題を抽出し、課題解決のための最適なソリューション(研修・教育プログラム)の設計/運営までのコンサルティング・サービスを展開中。 人/組織が本来持ち備えている力(潜在力)を引き出し、人/組織が自律的で持続的な成長を遂げていく支援をさせていただいています。