最近、人材開発の分野でも「メンタルヘルス」という言葉を耳にする機会が増えてきました。今までは、医療的な見地からこの問題に取り組んでいたようですが、成果を得るどころか、企業を取り巻く環境激化とともに、メンタル不全者が続出し、個人の問題では捉えきれなくなってきているのです。
ストレスフルな現代社会において、企業においてもメンタルダウンが企業成長にも影を落としてきている現状を踏まえ、人材開発・組織開発の視点から捉える必要に迫られてきています。この様な機運が高まってきたことは企業にとっても従業員にとっても喜ばしいことではありますが、その対策はあまり進んでいないのが実情です。
うつ病で外来を訪れる患者数はここ20年でなんと70倍にも増えています。行政の判断指針改訂を受け、労災認定件数も急増しています。うつ病対策は、今や企業のリスク管理の重要な課題となっているのです。
日本では、うつ病は病気と捉える傾向が強いようですが、アメリカでは異を唱える人が増えてきています。何故なら、現在精神疾患の医学的な対応は証明されていない仮説の上に成り立っていて、生物学的根拠は確立されていないのです。
実は最近の報告では、うつ病治療に使われる抗うつ剤の有効性は50~60%程度であるのに対し、うつ病治療のプラシーボ(偽薬)効果は47~50%に達しています。精神疾患に使われてきている薬物の殆どが危険で依存性があるのに効果がないという驚くべき報告もあります。
それでも尚、精神病という領域が存在感を維持させているのは、巨大な利権を擁する向精神約産業が背景にあるといわれています。今こそ、うつ病を精神病と捉えるのではなく、精神的不健康と捉え、その対策に取り組むことが重要なのです。
社会経済生産性本部の調査によると、上場企業の半数以上が社員の心の病が増える傾向にあるとしています。特に「人を育て仕事の意味を考える余裕がない」という会社ほど、心の病を訴える傾向が強いことが確認されています。「職場でのつながりが感じにくい」「仕事の全体像や意味を考える余裕がなくなってきている」とする企業では実に60%以上が心の病が増加傾向と回答しているのです。こころが不健康な状態ではモチベーションが上がらず、当然ながら組織の生産性にも大きな影響を及ぼしてきています。
最近の調査では、1000人以上の従業員がいる企業では9割がメンタルケアに取り組んでいますが、従業員が1000名未満の企業では3~4割程度にとどまっています。しかし、取り組んでいる企業の大半は、従来型の精神病という前提による医療的支援にとどまっており、本質的な問題解決には至っていません。
では、メンタルヘルスの本質的な問題解決のために企業は今後どの様に取り組んでいくべきなのでしょうか?
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2010.03.20
2015.12.13
松本 真治
有限会社ワースプランニング 代表取締役
人材・組織開発コンサルタント。 人材・組織の潜在力を引き出すアセスメント(サーベイ)の企画/開発/運用から本質的課題を抽出し、課題解決のための最適なソリューション(研修・教育プログラム)の設計/運営までのコンサルティング・サービスを展開中。 人/組織が本来持ち備えている力(潜在力)を引き出し、人/組織が自律的で持続的な成長を遂げていく支援をさせていただいています。