現代はIT社会。ありとあらゆるデジタル機器にソフトウェアが必ず組み込まれている。プログラムあるところ、必ずバグも存在する。そこで必要不可欠な作業となるのがデバッグだ。日本唯一・デバッグ専業企業として上場を成し遂げたデジタルハーツ社の軌跡を辿る。
■200人採用作戦
「やばい。どうしよう。ぶっちゃけ、できるだろうかと浮き足立ちましたね。でも、動かなきゃ何も始まらない。そうみんなで決めてからは早かったです」
まずオフィスである。200人規模ともなれば、まさかワンルームマンションの一室を事務所にし続けるわけにはいかない。何とか資金をやり繰りしてビルのワンフロアを借り、さらに求人広告を打った。
「1ページの8分の1ぐらいのスペースですね。それでも10万円ぐらいしたのかな、我々にとっては大金です。これで10人ぐらい来れば上等じゃないの、なんて言ってたらとんでもないことになったんです」
実に応募者は200人に上ったのだ。恐らくは、デバッグのバイトをアルバイト情報誌で募集すること自体が極めて珍しかったのだろう。引っ越したばかりの事務所では電話が一日中、鳴りっ放しとなった。
「まるで泥縄ですが次は、どうやって面接するんだって大騒ぎ。そこで急遽区民会館を借りて、15分単位で10人ぐらいずつを一気に面接していこうと決まった。私の担当は面接の前の会社説明です」
繰り返すがデバッグという業務が、まだ市民権を得る前の話である。そもそもデバッグとはどういう業務なのか、専業で取り組んでいるデジタルハーツ社はどういう企業なのか。伝えるべきことは山ほどあった。
「中にはゲームやって遊んでたらいいんでしょ? なんて平気で言ってくる人も混じってましたからね。大変ですよ。私が一通り会社概要を話し、続いてきっちり面接をやりました」
面接で注意して見ていたのはコミュニケーション能力だという。なぜならデバッグは一人で進められる仕事ではなく、チームで役割を分担しながら取組む業務だ。チーム内でコミュニケーションがうまく取れなければ、仕事は進まない。
「チームリーダーからの指示に対して、きちんとフィードバックを返すことができるかどうか。あるいはソフトの不具合を、的確な言葉で伝えることができるかどうか。このあたりがポイントですね」
何とか面接を済ませると、次は研修である。といっても、これも同社にとっては初体験となる作業だ。
「市販のゲームソフトでバグがある機種がわかっていましたから、それを買ってきました。これを合格者にやらせて、不具合を見つけさせる。見つかったら、レポートに書かせる。そんな研修を考え出して、やっていました」
ほとんど付け焼き刃といっていい対応である。こんな状態でデジタルハーツ社は果たして、無事に同社にとって一世一代ともいえる大仕事をこなせたのだろうか。
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FMO第14弾【株式会社デジタルハーツ】
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