ここのところ、個人的にペルソナに夢中ですが、先日筆者さんの1人と話をしていて、私が熱中しているのは、本質的にはペルソナ自身ではないことに気づきました。私が求めているのは、ペルソナの背後にあるUCD(ユーザー中心デザイン)であり、それをペルソナに落とし込むためのユーザーモデリングだったのです。
ペルソナとは対象ユーザーを具体的に表す仮想人物像であり、そのペルソナ自体の存在価値は確かに大きいものです。特に、さまざまな関係者の間でユーザー像をしっかりと共有するために有用です。たとえば雑誌を作る場合、編集長、編集者、筆者、デザイナー、出版営業、広告営業、さらに広告主といった多くの人が関係してきます。ペルソナがあれば、「この雑誌の主要な読者はこの人です」と、スムーズに、かつブレが少ない形で読者像を共有できます。
しかし、ペルソナがその価値を発揮するためには、そのペルソナがしっかりとしたユーザーモデリングの下で作られていなければ意味がありません。適当な推測や不確かな情報を元に作られたペルソナは、真実味に欠けて信用できないため、結局使われなくなってしまいます。恥ずかしながら、Web担では以前にそういったペルソナを使おうとしていたので、身を以てそういう状況を体験しました。
最近はペルソナが注目されることが多くなっていますが、Web担の読者の方は、決して「ペルソナを作ること」を目的にしてしまわないように注意してください。
ペルソナは、あくまでもユーザー中心のデザインを進めるうえでの手段の1つです。本当のユーザーの姿やニーズを知り、その情報をウェブサイトや製品のデザインに活かすためにペルソナを作るのです。そういった目的を忘れてペルソナだけを作っても、まさに仏作って魂入れず、役に立たないペルソナになってしまいます。
もし「ペルソナを作ればすべてがうまくいきます」と言ってすり寄ってくるコンサルタントがいたら、注意してください。大切なのはペルソナのシートではなく、その背景にあるユーザー中心デザインであり、ペルソナを作るうえで行うユーザー調査とユーザーモデリングなのです。
逆に言えば、そこがしっかりとしているペルソナならば、シナリオと併せて使うことで、非常に強力なツールになります。
特に、わかりやすい形でユーザー像を提示できることは強いものです。「ユーザー」という漠然とした言葉では対象をイメージできない人でも、目の前にお客さんがいれば、その人のために行動できるものです。ペルソナは、そういったお客さんの姿を思い浮かべやすくしてくれるものなのですから。
ユーザー中心デザインの意識があまねく浸透した世の中を想像してみてください。素敵だと思いませんか?
※この記事は、Web担当者Forum(Web担)に掲載した編集部コラムを転載しています。
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2008.09.12
2008.09.16
安田 英久
株式会社インプレスビジネスメディア Web担当者Forum編集長
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