マズローの欲求階層をベースにして時代を読み解くと?

2008.08.04

仕事術

マズローの欲求階層をベースにして時代を読み解くと?

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

マズローの欲求階層は、欲求を中心に物事を考える枠組みです。この枠組みを使えば、時代の変遷や世代間の価値観のギャップといったことが、それなりの説得力を持って理解できます。今回は、この枠組みを使って、これまでとこれからを読み解いていきましょう。

 マズローの欲求階層はご存知ですよね。

 生理欲求、安全欲求、関係性欲求、承認欲求、自己実現欲求の順番で、人の欲求は強くなっていくというお話しです。

 それで、私は、今の時代は承認欲求の強い時代だと思っています。

 所属するコミュニティーの中で認められる欲求が強くなっているのでは?と思っているということですね。

 何の根拠があってそんなことを言っているんだ!

 と、読んでいてお思いになると思いますので、解説をしていこうと思います。

 まず、「戦後」からはじめましょう。

 文字通り、日本の戦後は焼け野原でしたね。そこから、戦後の資本主義が日本に注入されたと考えていいでしょう。
(戦前の恐慌以前も資本主義経済ではありますが、現在と同一軸上のパラダイムとしてみるならば、やはり戦後をスタートと見るほうが考えやすいと思います。)

 だいたい、1945年に終戦していますので、その後の大体18年間ぐらい、1963年ぐらいまでの時代からはじめましょう。

 その時代は、食うことで精一杯ですね。いわゆる生理的欲求が強い時代です。食えればなんでもいいんです。食うためなら、危険を冒してでも、食いますね。食えることが気持ちいいのです。もう最高に。

 ただ、食えるのがある程度、当たり前になってくると、安全に食べたい、と思うようになります。安全を確保して食べていくことが気持ちいいのです。

 この時代が、1963年から、1981年ぐらいでしょうか?

 1960年までは、2割なかった白黒テレビの普及率が、1960年代中ごろには爆発的に普及してますから、食えるには食えるようになってきたと言えると思います。

 危険に満ちていても、食べることが気持ちよかったのが、安全に食べたくなってくるんですね。

 安全に、暮らしていきたい。安全に暮らしていくことが、気持ちいい。その欲求が強くなる。

 そうすると、寄らば大樹の陰と言いますか、ずっと会社に我慢して仕えて生きていくことは気持ちよかったわけです。ちょっと難しい物言いですが、我慢しているわけでもないんですよね。気持ちいいんですから。

 うまく伝わりますでしょうか?

 この頃に、20代の若者だった方々が、今は40代~60代ぐらいにおなりになっていて、社会的な影響力を持っています。

 そういった方々が、近頃の若者は根性がない、我慢が足りないと言っているのを聞くと、そうかなあ、と思います。

 彼らは、会社にしがみつくこと、自分のリスクを最小化することが、欲求階層的に見れば、気持ちよかったのです。

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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