先週のことになるが、6月24日、KDDIがNTTの独占状態にある電報事業に参入すると発表した。電報というオールドメディアに参入し、NTTが握る9割強のシェアから2割を奪取しようという目標だ。
電報事業に参入するのはKDDIの子会社であるKDDIエボルバ。従来から展開している国際電報サービスを7月1日から国内市場でも展開し、配送は日通が担当するという。
<KDDI、電報参入 日通と提携、料金2割下げ>
日経WOMAN http://woman.nikkei.co.jp/life/news/article.aspx?id=20080624ax017l1
KDDIエボルバ・ニュースリリース http://www.k-evolva.com/news/detail20080624.html
「電報」といえば、多くの人が細々とした市場しか残っていない超・オールドメディアと思うだろう。事実、国内の電報市場は<直近のピークだった1996年度から約4割縮小>だという。しかし、多くの人にとって電報を送る・受け取るという経験は慶弔時であるように、<慶弔用の需要が底堅く、近年は横ばい傾向が続いている>ということであり、その市場規模は<現在、約600億円>あるとのことだ。
つまり、このオールドメディアは、成長はしないものの約600億円という、それなり規模を持った市場であるのだ。
市場に変化があったのは、2003年、信書便法の施行である。それまで電報は電気通信事業法で、原則的にはNTT東西とKDDIのみに許諾された事業だった。それが信書便法で事実上市場開放され、人手とコストがかかる受付業務をインターネットに限定し効率化することで、収益を見込んで多くのベンチャーが参入したのである。
しかし、NTTから切り取れたシェアは1割にも満たなかった。収益性が高い慶弔用に絞り、受付をインターネットに限定してコスト削減しても、なかなか収益を上げるのは難しいのが現実だった。それ故に、思い切った低価格化や、営業攻勢もかけられなかった結果である。受付という入り口側は効率化できても、配達という出口側は相変わらず人手がかかる。その部分を効率化することが困難なのが大きな要因であることは間違いない。
ここでKDDIの戦略として一つ見えてくるのは、今回のキモである「日通との提携」だ。先行して参入していたベンチャーも、当然、配達は自社ではなく外注しているが、KDDIは「NTTのシェアの2割を切り取る」という大きな目標を掲げ、その規模を元に日通と提携しているのだ。電報だけを取り扱う配送体制ではなく、日通の既存事業の配送品と組み合わせれば、かなりの効率化が実現するだろう。それも、取扱量が増えれば増えるほど、効率は高まる。
もう一つのキモは「料金2割下げ」である。配送の規模を確保するためには、当然ながら、電報自体の取扱量を増やさなければならない。そのためにはまず、料金を下げて利用者にアピールし、NTTからシェアを切り取ろうという狙いだ。
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2008.07.02
2008.07.17
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。