カロリーメイト VS. SOYJOY・大塚製薬の深謀遠慮

2008.06.27

営業・マーケティング

カロリーメイト VS. SOYJOY・大塚製薬の深謀遠慮

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

「食べた経験がある・一番好きなバランス栄養食」の第一位はカロリーメイト、第二位はSOYJOY、第三位が毎日果実。こんな調査結果が発表された。王者カロリーメイトを猛追する新星SOYJOY、さらにその後を追う毎日果実。そんな構図に見えるのだが・・・。

・26.1%:市場影響シェア=市場に影響をもたらす、一歩抜け出した状態を示すシェア。2位以下であってもトップを狙えるポジション。トップなら逆転される可能性がある。
・19.3%:並列的競争シェア=複数のライバルが拮抗し、安定的な地位をどの企業も獲得できていない状態。
・6.8%:市場存在シェア=生活者が人からヒントを出されて思い出せる(助成想起)レベルのシェア。市場において、かろうじて存在が許されるレベル。

というものが当てはまるだろう。とすると、カロリーメイトは「市場影響シェア」をだいぶ上回っているが、実際には「不動のトップ」というわけではないともいえる。
SOY JOYはほぼ「並列的競争シェア」の数値と同じだ。故に、トップを狙うこともできるだろう。
毎日果実は第三位とはいえ、実は「市場存在シェア」ギリギリであり、結構苦しい立場であることが分かる。

だが、ここでメーカーを思い出してみると、カロリーメイトとSOY JOYはどちらも大塚製薬の製品である。とすれば、両者の数字を足しあげてみるとどうだろうか。52.9%。
クープマンによると73.9%で、「独占的シェア」となり、短期的には首位のポジションを奪われることがあり得ない、絶対的な安定シェアを獲得している状態になるという。ここまでは届いていないが、41.7%で「安定的シェア」という、不測の事態がない限り、競合からの逆転や、新規参入によってトップが奪われることがない状態は軽く超えていることになる。
さすがは「バランス栄養食」というコンセプトそのものを開発した大塚製薬だといえるだろう。

そうして考えると、この「バランス栄養食」カテゴリーにおける大塚製薬の戦略が見えてくる。
カロリーメイトは発売から25年。四半世紀を経た「ロングセラー商品」だ。ロングセラーの鉄則である、市場の嗜好の変化に合わせつつ、関心を惹くための適度なバリエーション商品の上市や定期的な告知活動は欠かしていない。一方、食品会社に対してどうしても劣後するチャネルの確保を、独自の自動販売機に設置するなど販路確保も怠りはない。
カロリーメイトは着実に金を稼ぐ商品。つまり、「ポートフォリオマネジメント」でいうところの、「金のなる木」のポジションに厳然と存在しているのだ。
さらに「ポートフォリオマネジメント」における「金のなる木」の最も重要な役割は、大きな投資をせずに確実に金を稼ぎ、今後育てるべき「問題児」に対し、稼いだ金を投入することにある。いわずもがな、「問題児」はSOY JOYである。
SOY JOYは潤沢な資金の投入を受け、大規模なメディア攻勢やサンプリングなど、様々な施策によって、2年間という短期間で「問題児」から「スター」のポジションに見事に成長したのである。ここに大塚製薬の「バランス栄養食」無敵タッグが完成したわけだ。同社の見事な戦略であると言えるだろう。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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