【FBIアカデミーで教える心理交渉術】

2008.06.16

ライフ・ソーシャル

【FBIアカデミーで教える心理交渉術】

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

読みにくい本でした。文学性が高い表現と言いますか、にわかに理解しにくい言い回しと言いますか。原文のせいなのか翻訳のせいなのかはわかりませんでしたが。ただ、著者は交渉によって人生を切り開けるんだ、という意思をお持ちのようですね。

 ウィンウィンの成立のために重要なのは、①信頼関係を築き、②相手の力を借り、③対立者に対処する、ことである。

 信頼関係を築くために、時間を2つに分けて考えよう。進行期間と公式の対面の2つの時間だ。

 進行期間は、対立要素を確認し、合意への伏線を敷く期間だ。ここで信頼関係を築いておき、対立点が本当に具体化する前に、お互いに協力する関係を築いておくことで、公式の対面の時に、お互いが安心して譲歩できる。

 対立というものの理解も、ウィンウィンに至るには重要だ。対立には意見の対立と本能的対立がある。論理的に論点が見える意見の対立は視点を相手に移すことで解消可能だが、本能的対立は、感情に根ざした対立であり、なかなか解消しづらい。

 どんなに困難な交渉にも打開策はある。交渉とは血の通った人間同士が合意に至るゲームである。このゲームを展開していくことで、ポジティブな人生を切り開くことができる。ぜひこの本の知見を活かし、見返りの大きな、束縛のない人生を歩んで欲しい。

 ・・・、と長い長いサマリーでした。

 この本は、英語圏の本にしては、階層構造があまりきっちりしていない、なんと言えばいいのか、非常に散文的な書籍です。翻訳の問題なのか、著者の書き方の問題なのかはわかりませんが。

 読みやすいのか読みにくいのか、一般性がある原則を述べているのか、そうでないのかが非常にわかりにくい本です。

 まあ、タイトルに「FBI」と、「心理交渉術」とあるので、目を引きます。ベストセラーなんて、そんなものですね。

 読んでから、自分で統合しなおすことが日々に役立てるためには大事です。どんな本でもそうかもしれませんが、この本の知見を活かすには、あと何冊か交渉の本を併せて読む必要があると思います。

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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