タリーズコーヒーが6月19日より初のパフェメニュー「T's Parffle」発売するという。「パフェ」は同社の従来路線からすると、少々異彩のメニューといえるかもしれない。そこに隠された意図とはなんだろうか。
エスプレッソを主体とした高品質なコーヒーを提供する、アメリカ西海岸発祥のコーヒー店は「シアトル系コーヒーショップ」と呼ばれる。日本では96年にスターバックスが銀座松や裏の小さな二階建て店舗で進出し、翌年タリーズコーヒーも同じ銀座に上陸した。以来、日本における「スペシャリティーコーヒーショップの二強」と言ってもいいだろう。
その二強である、スターバックスとタリーズにおける今日の差異点を見てみよう。最も分かりやすいのは「喫煙室」の存在だ。従来のカフェにありがちな、席を分けただけだったり、中途半端なガラスの壁で仕切られた分煙とは違って、ほぼ完璧に隔絶された「愛煙家の世界」が店内に厳然と存在している。喫煙室を天井までガラス壁で仕切った場合、消防法の定めによって、そこは一つの部屋と見なされるため、防火設備設置などの負担が増す。にもかかわらず、完璧な分煙を行うということは、スペシャリティーコーヒーショップならではということだろう。スターバックスは、「コーヒーの香りを損なわないため」としてはじめからタバコを店内からシャットアウトしているが、タリーズも完璧な分煙によって劣後する要素にななっていない。
しかし、その喫煙室の存在故か、スターバックスとタリーズの客層と人気メニューは若干異なる。
両社とも幅広い客層から支持されているのは事実であるが、スターバックスは20代前半の客層が多く、人気メニューはコーヒーや果汁を氷をミキサーで砕いて混ぜ合わせた「フラペチーノ」だ。
対するタリーズ。「フラペチーノ」はスターバックスの登録商標であるが、タリーズも同様な製法で作るフローズンドリンク「スワークル」がある。しかし、同社は、スターバックスよりも平均年齢が少し高い25歳以上の、よりコーヒーの味にこだわりが強い層をメインターゲットと据えているという。
その両社の微妙な棲み分けを崩すものが、パフェメニュー「T's Parffle」ではないだろうか。正直な所、スターバックの「フラペチーノ」とタリーズの「スワークル」、かなりのファン層でなければそんなに差異は感じられないだろう。その環境下で、「フラペチーノ」を好む、スターバックスの主要顧客層を、新たなフローズンメニューでタリーズは取り込みを狙っているのではと考えられる。
もう一つの意図も見え隠れする。両社ともメニューの片隅に、子供向けの「キッズメニュー」があるのだが、そのラインナップを見ると、タリーズの方が少々充実度が勝っているように感じられる。メインターゲット層の年齢が上なだけに、タリーズからは「子供連れ層」をさらに強化しようという狙いが感じられるのだ。タリーズの出店地域は都市部一等立地がメインなので、「お出かけ時需要」の取り込みが期待できるだろう。
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2008.07.02
2008.07.08
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。