「キャリアデザイン」なる概念が矮小化する流れにあるように感じる。そこに「プロフェッショナルシップ」という新概念を持ち込んで、キャリア教育について少し考えてみたい。
だから、いま、キャリアデザイン研修なるものでやられている
自己分析やキャリアプランシート作成が、
分析のための分析ワーク、
プランのためのプランワークであるならば、それは意味がないと思うのです。
◆キャリア形成は「計画のあるなし」ではなく、「想いのあるなし」が要
私は研修で、「キャリアはある意味、行き当たりばったりでいい」と言っています。
それくらいオープンマインドでいたほうが、キャリアはどんどん開くからです。
想像のつく範囲で、こぢんまりと計画を立てて、
それで安心安住することは、結局、
自分の可能性を狭めることにつながりかねません。
「想定の範囲内に収まっている自分の未来」など何が面白いか、です。
(ポジティブな意味で)
「5年後の自分はどうなっているのか予想がつかないのが楽しみ」
というくらいの人生のほうが健全であるとも思います。
しかし、このことは、無防備に漫然と運任せにキャリアを過ごしてよい
と言っているのではありません。
力強いキャリア形成には、決定的に「目的」が必要です。
しかし、いきなり目的を明確に得ることのできる人はそう多くありません。
ですから、まずは「想い」を持つことからはじめればよいのです。
「想い」とは、“方向性と像”です。
当初は漠然とでも構わないので、自分が進みたい方向性を持つ。
その方向性でいろいろと行動で仕掛けると、だんだんその先の像(目標イメージ)が
見えてくる。そして、その見えてきた像は、方向性を修正し、強化する。
すると、像がまた、より鮮明になってくる。
そして、そのうちに、自分の中でそれを目指す意味も伴ってくる。
「目的」=「方向性×像」+「意味」
という分解式を私は使っていますが、
これらの要素は、互いに連鎖しながら、あいまいから明確化の流れをつくっていく。
この式の中で、最初の重要な一歩は、方向性=「想いを持つこと」です。
評論家の小林秀雄は『文科の学生諸君へ』の中でこう述べています。
「人間は自己を視る事から決して始めやしない。
自己を空想する処から始めるものだ」と。
キャリアをたくましく拓くためには、
小林の言うように、「己を空想(妄想でもいい)すること」です。
その空想が、現実の自分をいかようにでも引っ張り上げてくれるからです。
また、その空想を実現化しようとするとき、自分の中で、
過去に培った知識・技能を新しい角度で再構築しようとし、
不足している知識・技能をどんどん吸収していこうとする意欲が湧き起こる。
この未知の世界へ開いていく能動的なダイナミズムこそ、
キャリア形成の核心部分のひとつです。
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【6景】セルフ・リーダーシップ
2008.06.10
2008.05.12
2008.05.12
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。