とかく評判の悪かった「せんとくん」の刺客として「まんとくん」が登場した。が、筆者は一目見たときに「こりゃイカン!」と思ってしまった。そのわけは・・・。
さらに注目したいのは、前述の通り「せんとくん」はメディアへの多数の露出で、世間の人々にある程度「慣れ」が生じていることだ。その影響は米国の心理学者、フェスティンガーの「認知的不協和理論」で説明できる。簡単に言えば、人は自分の認識にそぐわない要素(不協和)に対し、新たな要素を探してそれを弱めようとする心の働きがあるということである。
今回の例に当てはめて考えてみよう。
彦根城のキャラクター「ひこにゃん」に代表されるような、いわゆる「ゆるきゃら」は「なんとなくかわいい」という世間の共通認識が形成されている。
それに対して、何やら、かわいくない「せんとくん」というキャラクターが登場する。
ここに矛盾が生じ、不協和が発生する。
目の前の不協和を解消する新たな要素が提示されるまでは、不満を提示しているが、ここで「まんとくん」が登場してしまった。
残念ながら「まんとくん」のデザイン的な完成度はそれほど高くないように思う。また、前述の通り、「せんとくん」に対する強力な差別化要因も持っていない。
すると、「また似たようなキャラクターが出てきた」という認知のされ方がなされ、結果として「『せんとくん』でもいいんじゃないか?」という「認知的不協和の解消」が起こる。
もちろん、全ての人が同じように考えるはずはないのだけれど、ネットの書き込みなどを見ると「せんとでいいや」という発言も散見される。
今後、「まんとくん」がどのような運命を辿るのかは分からない。
アサヒコムの記事では、平城遷都1300年記念事業協会が<友達が生まれるのは歓迎したいが、公式キャラはあくまで『せんとくん』。『まんとくん』との共演は要請があれば検討したい>と余裕のコメントをしている。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200806020063.html
案外、「せんと&まんと」なんて、お笑いコンビみたいに仲良く活躍するのかもしれない。
しかし、選考過程や費用問題、デザインに対する疑義や不満を元に刺客として誕生した経緯からすれば、本来のミッションを果たせそうもないのは明らかだ。
「チャレンジャーは徹底した差別化に命をかけよ」。「まんとくん」は大きな教訓を示してくれたと考えたい。
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2008.06.16
2008.07.17
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。