今日は久しぶりのビジネス書レビューです。 『顧客の時代がやってきた!「売れる仕組み」に革命が起きる』 は、米国・ロサンゼルスにオフィスを構え、 20年以上にわたり、日米間のビジネスの橋渡しに尽力されてきた 石塚しのぶ氏の著作。
さて、本書の議論の出発点となっているのは、
タイトルにもある
「顧客の時代」
という点です。
第1章で石塚氏は、社会全体の風潮として
「ニッチマインド」
が生まれつつあると述べています。
つまり、顧客の頭の中に、
「欲しいものは必ず見つかる」
という堅固な確信が芽生えつつあるということです。
なぜなら、
“店舗でも、カタログでも、インターネットでも、
購入方法にかかわるありとあらゆる選択肢があり、
情報を得るためのツールがある。
売り手主導で発信される宣伝/広告やマス・メディアに
頼る必要はなく、自分が求める 商品やサービスを自分と
同じ視点で利用する「一般消費者」たちの正直な意見や
感想を聞くことができる。
自分んの欲しいものを自力で探して見つからなければ、
ネットでほかの消費者とつながり、どこで買えるか
教えてもらえばいい。真の意味で、顧客に「選択権」が
ある時代が到来したのだ。”
ということだからです。
そして、石塚氏は第2章以降で、
すでに現実のものとなった
「顧客の時代」
において企業が生き残るためにどのような戦略・施策を
展開すべきかを豊富な事例に基づいて論じています。
私が最も面白いと思った事例は、
米国オフィス用品販売の最大手、
「ステープルズ」
の顧客の声を聞く徹底した姿勢や取り組みです。
顧客の声を聞くプログラムのことを専門的には
「VOC」(ボイス・オブ・カスタマー)
と呼びますが、ステープルズのVOCの中で、
ひときわユニークで刺激的な取り組みとして
紹介されていたのが、
「グループモニタリングセッション」
です。
これは、月に約4回、
ステープルズ本社の大講堂に数百人の社員が集まって、
1回につき1時間ほど、コンタクトセンターの顧客対応
をライブで傍聴するというもの。
通常、コンタクトセンターのオペレーターと顧客との
やり取りは、スーパーバイザーや、センターの品質向上を
担当する社員が定期的にモニタリングする程度です。
ところが、ステープルズではほぼ毎週1回、
数百人の社員が顧客の生の声を聴くことができるのです。
このセッションに参加する社員は、
普段は顧客と直に接することがほとんどありません。
こうした社員が、カスタマーサービスの現場をライブで体験し、
顧客が感じているであろう問題点や不平・不満などを
身をもって知ることで、顧客の抱える問題の根源を理解して、
顧客のニーズを先取りし、問題の発生を回避する方策を
立案する上でのインスピレーションを得ることができると、
同社では考えているのだそうです。
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2008.06.25
2015.07.17
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。