自律的人財の育成は重要問題である。しかし、「自律的」だけでは不十分である。個も組織も、その先の「自導的」にまで高めていかなければ・・・
著者の一人である野田さんは、
リーダーシップの原点が、
この天安門で戦車の前に立った一青年の姿にあるという。
青年が命を賭してその行動に出たのは、“内なる叫び”に従ってのことである。
それは、自らの内なる叫びによって、自らを導いたといってもいい。
そして、その勇気ある行動は、他の人びとを感化し、
結果的に、他の人びとを導くこととなる。
つまり、リーダーシップとは、
「リード・ザ・セルフ」を起点とし、
「リード・ザ・ピープル」、「リード・ザ・ソサイアティ」と変化していく。
こういう段階的成長のうちに、
自己をリードする人は、結果的に他者をリードする人になる。
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◆足らないのは“内なる声”によって「自らを導く」力
私が、研修の現場で、自律的に振る舞える人たちに
「何かが足りない」と感じていたのは、
つまるところ「セルフ・リーダーシップ」なのだと強く思いました。
「セルフ・リーダーシップ」とは、
他者を導くリーダーシップではなく、
自分自身を導くリーダーシップのことを言います。
セルフ・リーダーシップをここでは、「自導」という言葉で書き表しましょう。
さて、「自律的」であることと、「自導的」であることは、
多少重なりはあるものの別ものであるように思います。
自律的に働く人は、自分の律(規範やルールあるいはスタイル)を持って、
業務上、さまざまに出くわす出来事に対し、
自分なりに判断し、自分なりに行動をする人です。
一方、自導的に働く人は、
自らの“内なる声”を聞き取ることができ、
働く目的(目標像+その意味・意義)を描き抱いています。
そして、その目的によって、自らを導くように、
働き、キャリアを形成していく人です。
だから、自律的ではあるが、自導的でない人は存在します。
つまり、日ごろ大小の業務は巧みにやりこなせるけれども、
中長期の自分をどこへ導いていっていいか分からない人は多い。
また、経営側(他者)から出される理念や方針に対しては
いろいろと批評や意見を加えられても、
自分自身の夢や志なるものをふくよかに語ることのできない人は多い。
譬えて言うなら、
自分という船をしっかり造って(=自立)、
羅針盤もきちんと持っているが(=自律)、
さて、どこに自分自身を導いていっていいのかが分からない、見えない。
つまり、目的地を描いた地図を持っていないのです(=自導でない)。
◆職業人としての内的成熟過程「自立→自律→自導」
私は、職業人としての内的成熟過程を
「自立から自律へ」と2段階で考えていました。
(自律から斜め方向へ「合律」という半ステップも設定しましたが)
しかし、自律のその先に「自導」というもう1段階を加えた方がよさそうです。
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【6景】セルフ・リーダーシップ
2008.06.10
2008.05.12
2008.05.12
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。