詐欺強盗が義賊になる日

2023.02.06

ライフ・ソーシャル

詐欺強盗が義賊になる日

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/正体不明の隠し財産が、詐欺や強盗の結果、日の当たるところに出てきて、しばしば庶民の目に触れるようになると、あれ、これ、おかしかないか、と気づいて、金持ち相手の詐欺や強盗を義賊として拍手喝采して応援しかねない。/

だいぶ前に『金持ち父さん貧乏父さん』なんていう本がベストセラーになったが、世界中、税制が根本的におかしい。あの本にあるように、勤め人は、最初から収入のすべてが国に把握されていて、収入そのものからがっつり先に税金を引かれ、その残りで、家賃からなにから、生活のすべてをやりくりしないといけない。一方、個人経営者は、好き勝手に生活のすべてを会社の経費で落して利益を圧縮するから、会社にさえほとんど税金がかからない。くわえて、なんだかんだ政府の補助金をたっぷり受け取り、自宅はもちろん別荘や愛人手当まで会社の施設や秘書の名目だったりする。会社にカネを貯め込んで、その経営者の地位だけ、子どもに譲るから、相続税もかからない。それどころか、価格不定の美術品の現物を現金で売買したり、減価償却済の高級車なんかをうまく売却したりすると、かんたんに簿外の裏金ができてしまう。

まあ、世間の多くの人は、いまだにこんな経済や政治のカラクリを知らないから、文句も言わないのだろうし、うまくやっている連中からすれば、文句があるなら自分も経営者になればいいじゃないか、投資と思ってパー券買って政治家に近づけばいいじゃないか、貯め込んでいるのも、いざというときの個人保証のためだ、とか開き直るのだろうが、いろいろこそこそ家に隠しているところからして、やはりうしろめたいところはあるのだろう。そして、そんな正体不明の隠し財産が、詐欺や強盗の結果、日の当たるところに出てきて、しばしば庶民の目に触れるようになると、いくら「バカ」な庶民でも、あれ、これ、おかしかないか、と気づいて、金持ち相手の詐欺や強盗を義賊として拍手喝采して応援しかねない。そうなる前に、個人経営者に関する税制を正さないと、ほんとうにたいへんなことになる。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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