「Eコマースの時代」「コロナでネットショッピングが顕著に」「買い物はネットで」などなど、いまやインターネットでの取引なくしてビジネスは成立しないとでも言うような勢いだが、本当にそうなのだろうか。
ユーザー側、企業側からの要因
さまざまな理由が考えられると思うが、ユーザー側、企業側、商習慣の観点から見てみよう。
まず、ユーザー側からしてみれば、特に都市部において、買い物に出かけることに不自由がないことがひとつ挙げられるだろう。都市部においては歩けばすぐにコンビニがあるような状況であり、配達の日時指定がある程度できるとはいえ、欲しいと思ったときに手に入る利便性は捨てがたい。こうした物販流通網の整備があればECの必要性もそれほどでもないかもしれない。
とはいえ、もっとも大きいのは、実質賃金が増えないなかでの消費意欲の低迷ということだろう。通販(EC)ということは、物流コストがどうしてもオンされるものであり、少しでも節約しようと思えば、自分で買いにいくしかない。好きな飲食店には並ぶことも辞さない日本人の特性を考えれば、少しでも余裕が生まれれば、いつどこでECのブームが起こってもおかしくはない。
ECを提供する企業側から見れば、相変わらず大きいのは、経営陣のECビジネスに対する理解の甘さではないか。これも昔から言われていることだが、ECを甘く考えすぎている。「ホームページさえ作れば良い」「適度なプロモーションさえ行っていれば良い」「担当は数名で十分、受発注管理や配送管理、物流など既存のシステムで十分」「Amazon、楽天などのプラットフォームに出店すれば良い」などの認識だろう。それで新たなビジネスが成長するはずがないというのは誰でも思うことなのだが、企業側のECに対する投資金額や人材開発・採用の面を見ると、疑わしくなってくる。
そして、もっとも大きな問題は崩すことの難しい商習慣だろう。「メーカー(商社)~問屋~小売店」が強固に結束する商流を壊してまでECを本格的に行っていくことは相当難しいのではないか。実際、高いEC化率を達成している商材の背景には、日本の商習慣の壁に関係なく展開できる外資資本の企業の存在が大きい。さらに、企業内での雇用の問題もある。ECに本格的に進出しようと思えば、新たな人材の採用と商流の変革による余剰人員の解雇がどうしても不可避となる。これも現在の日本の企業ではほぼ不可能な話だ。
このままでは、B2Cにおける日本のECが大きく飛躍することはおそらく難しいだろう。この流れを変えるには、ECとは、これまでの商習慣とはまったく別のビジネスモデルであることを十分に理解し、自分の会社にとってECはどうあるべきかをいち早く戦略としてつくりあげていくことが必要となる。EC化率の上昇が日本の経済成長に寄与するのは間違いのないことであり、これからの経営者の大きな課題だ。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
コンテンツ・マーケティング
2015.10.09
2015.10.16
2022.10.03
2023.06.02
2023.06.26