今回は、調達購買業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)について、最終回(3回目)の投稿になります。 先回述べた調達購買業務のDXの課題(特に情報系DX)に対して、どのように課題を解決していけばよいかについて述べていきましょう。
前回も述べましたが、調達購買業務のDXは大きく分けて、業務プロセスを直接的にデジタル化する、取引系(実行系)のシステムと、調達購買業務を通じて蓄積されたデータを活用して、コスト削減や付加価値の向上を図る、情報系のDXに分けられます。
特に情報系DXが上手くいっておらず、何故なら情報系DXは、情報毎に収集~分析~活用のプロセスを整備することが必須であり、これが上手くいっていないことが、日本企業の調達購買業務のDXが進んでいない、理由の一つと、述べてきました。
それでは、この課題に対して、日本企業は、今後どのように調達購買業務のDXを進めていくべきでしょうか。
情報系DXの情報は、大きく分けて、購入品に関する情報、サプライヤに関する情報、マネジメントに関する情報の三種類に層別されます。この中で、購入品に関する情報のDXを例にして、もう少し考えていきましょう。
先回も触れましたが、購入品に関する情報は、コストやコスト明細、品番、仕様などの属性等の情報です。これらの情報を収集し、コスト妥当性の評価などの分析を行い、コスト査定に活用することで、情報収集~分析~活用のサイクルを回して成果につなげていきます。
バイヤーはサプライヤと価格を決める決定権をもっています。購買経験のある方ならご存知でしょうが、価格決定のためのデータ活用のニーズは、非常に高いです。
価格決定のためのデータ活用とは、何かと比較することになります。私の方法論によりますと、比較対象になり得るものは、10パターン以上上げられるでしょう。しかし、今はその10パターン以上の比較対象を探すのに、たいへん時間がかかっています。
これをもっと効率的に探せる方法があれば、データ活用は進むのです。(コスト交渉の結果、コストが下がるかどうかは、また別問題ですが。)データを探せない理由はいくつか、上げられます。
まずは何を、です。比較対象にするためには、対象品と同じ、もしくは似ているものが、いくらであったのか、わからなければ意味がありません。つまり、何が、を特定できないと、比較するためのデータが得られないのです。
ここで問題になるのは、何が、がきちんと図面や仕様書などで、定義されていれば、良いのですが、モノを買う際には、単品で購入したり、工事や運用全て購入したりしますので、なかなか類似品や同じものを特定し、探し出すことが難しいということです。
一方で、コストの情報も同じことが言えます。最近は、コスト分析という概念が普及してきており、コスト明細を取得しやすい状況になってきましたが、依頼しても、サプライヤからコスト明細を提出してもらえない、という声は、最近でもよくあることです。コスト情報は、明細がなければ、細かい分析ができません。なので、コスト妥当性評価をすることも難しくなります。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。