近年、日本企業は「製品スペックで勝っても、事業で負ける」というような問題に直面することが多くなりました。情報や知識、技術よりも上位にある事業概念レベルでの創造力に弱さがあることが1つの要因ではないでしょうか。「概念のイノベーションを起こす力」ともいうべき、事業に対する在り方、中核的価値、グランド・コンセプトを打ち立てる思考力が、いま強く求められています。
「モビリティ」は、現代人が求めるきわめて本質的な価値であり、中核的価値として掲げるにふさわしいものです。ビジネス出張や個人旅行、日常の外出など、私たちの能動的生活に移動はつきものです。
例えば、いま自分が東京のオフィスビルにいるとして、これから大阪まで出張に出かけようとするとき、スマートフォン(スマホ)のアプリか何かで現在地と目的地を入力さえすれば、移動経路・移動手段の選択肢をいくつか提示してくれる。そしてその中から最適なものを選べば(それは電車かもしれないし、タクシーかもしれない、レンタカーかもしれない)、予約手配や発券手配、そして料金決済まで、そのスマホ画面で完結できる。おまけに、リピート顧客はこれまでのポイントが決済に使えたり、特別割引クーポンまで手に入る。こうした統合的なサービスは時代の要請にかなっています。
「移動すること」の利便性をいかに向上させ、利用者の能動的活動を支えていくことができるか。目下、「Mobility as a Service|MaaS」として発想された第Ⅲ業態は自社他社、他業界を巻き込んだ大がかりな事業として形成途上にあります。
「X as (a) Y」──XとYに何を入れるか
では、ここから「アズ・ア・サービス」のもととなる発想法を具体的にみていきましょう。この事業概念発想の原型は「X as (a) Y(=YとしてのX)」、言い換えると「XをYという光を当ててながめるとどうなるか」ということです。そのイメージを下に描きました。
昨今は多くの商材(売りたいモノ・コト)においてそれ自体の差別化が難しくなっています。リバースエンジニアリングやベンチマーキングの技法の発達によって、どこかでヒット商品が生まれても参入各社がすぐに真似て追いついてくるからです。そうして製品やサービスのコモディティ化が進んでしまいます。
そのために、商材に新しい概念の光を当ててゲームチェンジを図ることが求められます。その光はその商材を「新しい概念をもった何か」に生まれ変わらせ、商材は「~として」提供されることになります。その仕組みが新たな事業をつくり出すわけです。
私はこの発想法を「アズ変換」モデルとか、単純に「アズ・ア」モデルと呼んでいます。
さて、肝心なのは「X as (a) Y」において[X]と[Y]に何を入れるのか───ここがいわゆる「コンセプチュアル(概念的)思考」の出番です。発想型としては3種類考えられます。
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2015.07.10
2009.02.10
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。