行動経済学が注目されているとはいえ、B2Bビジネスの現場、セールスの場面においては、どのように活用すればいいのだろうか。
その意思決定のプロセスは、「ハロー効果」によって、さらに、「目立つ特徴」に引きずられ、それだけで評価がポジティブ(ネガティブ)に振れてしまう。「○○出身のあいつが言うのだから間違いない」「さすがMBAホルダーの○○だ」ということだろう。
また、組織においては、売上拡大、利益拡大のために、重要な戦略や活動方針を定めてはいるものの、そこで働く大半の人は、わかってはいるものの、目の前の問題に常に振り回されている。「部長からOKが出ない」「顧客からの理不尽なクレームがくる」といった、すぐに解決しなければならない問題を毎日いくつも抱えながら仕事している。そうしたなかでは、長期目標に向かった合理的活動などほとんど関係ない、目の前の「痛み」をいかに解決するかに翻弄される。しかも忙しい、できる人ほどそうなる。
元来人は、「得をすること」よりも「損をすること」に敏感に反応してしまう「損失回避性」「保有効果」があるという。誰でも目の前に「問題」が勃発すれば回避したいと願う。
ビジネスに置き換えれば、できる限りリスクヘッジをして、損をすることがないようにしたい、自分が持っているもの(評価や現在得ている数字的なもの)を落としたくない、手放したくない、ということなのだろう。
そしてとにかく「簡単な表現のもの」を好む。それだけで、説得力があって、知的に感じるのだろう。ソリューションのキーワードや問題解決のためのドキュメントなどもそうだ。いまで言えば、さしずめ「DX」か。
顧客のキーマンや上層部の意思決定の判断基準を正確に把握するのは本当に難しいことだ。まず、そもそも基準があいまいということがある。相手が上位役職であればあるほど、客観的で絶対的な基準ではなく、もともと自分の持っている基準から、どう変化したのかを持っているものだ。「参照点依存症」というらしいが、まずその基準を理解する必要があるのだろう。
また、状況によっては、最初に得た情報が基準になってしまう「アンカリング効果」や、先に得た情報によってあとの意思決定に影響を与える「プライミング効果」もあるというから、本当に、その場その場で、意思決定の基準が異なってくるということなのだろう。
こう考えれば、行動経済学はB2Bでこそ生きる経済学ではないかとも思えてくる。具体的なフレームワークとして確立されるのも遠くないかもしれない。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2009.02.10