B2Bビジネスの現場に「行動経済学」をどう生かすか

2021.07.23

営業・マーケティング

B2Bビジネスの現場に「行動経済学」をどう生かすか

猪口 真
株式会社パトス 代表取締役

行動経済学が注目されているとはいえ、B2Bビジネスの現場、セールスの場面においては、どのように活用すればいいのだろうか。

行動経済学が注目されているとはいえ、B2Bビジネスの現場、セールスの場面においては、どのように活用すればいいのだろうか。

「プロスペクト理論」「サンクコスト」「おとり効果」「現在志向バイアス効果」など仕掛けてみても、組織の意思決定者は一人ではないため、人間関係上のあつれきとなって、それが逆効果になってしまうことすらあるだろう。

マーケティング理論のなかでは、原則的に、「個人や組織は、少しでも多くの利益を得るために、誰もが同じように合理的な意思決定をする」ことが前提とされている。

いまはやりのマーケティング・オートメーションでもそうだ。アクセスやレスポンスによってスコア化し、マーケティング施策をアルゴリズムで決めていくのだから、まさに合理性の塊だ。

B2Cでは、衝動買いしたり、なぜか買ってしまったりすることはしょっちゅうだが、B2Bではどうか。実際には、B2C以上に衝動買いや非論理的な購入をいやというほど行っているはず。

行動経済学にある内容から考えた場合、我々が普段からB2Bビジネスのなかで直面する事象を思い出してみると、やや乱暴かもしれないが、次の3点は間違いなく言えるのではないか。

・意思決定は、原則的に、スピードと役職上位者の先入観が優先される

・最優先の課題は、その都度、人によってまったく違うが、何よりも、現在の「痛み」をとることが優先される

・基本的にワンイシューを好む

これらを行動経済学のフレーズで見てみると、どうなるのだろう。

優れたビジネスマンは、都度、降りかかった課題のたびに適切な意思決定を行っていると思えるが、案外そうでもなかったりする。むしろ、優秀な人ほど、自分の元の考えを変えたくない、維持したい傾向があるために、その考えに有利な情報ばかり探してしまったり、自分の考えとは違う情報やソリューションは排除したりする「確証バイアス」「一貫性の法則」などによって、なかなか意見を変えることができない。

アスリートゴルファーを自負する人など、これの際たるものだろう。自分の理論の正しさを探すことばかりやっている。(これは仕事ではないか)

「ヒューリスティクス(heuristics:発見的手法)」という言葉があるという。経験則や先入観から、なるべく素早く、効率的に答えを導こうとする思考法ということらしいが、あくまでも過去の経験や記憶に基づいた判断であり、論理的な思考というわけではない。これは、確かにB2CというよりもB2B的な思考かもしれない。とにかく素早い意思決定をしたがる(そのほうができるビジネスマンとされる)。もともと持っている経験則や先入観が、その人のポジションや権限によって、さらにバイアスがかかるわけだから、相当にはびこっている意思決定の手段だろう。

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