脱・使い捨ては、まずこれから

2008.03.22

ライフ・ソーシャル

脱・使い捨ては、まずこれから

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

昨日の東京はものすごい風雨が吹き荒れた。暖かい空気と冷たい空気が上空でせめぎ合い、まだ冬が競り勝ったようだ。冷たい雨と風だった。そうして、北の風や南の風にもまれながら、三寒四温で春の訪れを知るのが日本人なのだろう。

夜でもまだ衰えない風雨は、路上に悲惨な姿のあるモノを散乱させた。いや、正確には散乱させたのは風ではなく人で、風がその原因を作っただけだ。
春の訪れを知るにはどうにもイタダケナイそのモノとはビニール傘。

筆者の自宅は駅のすぐそばなのだが、駅の改札口から自宅のエントランス付近まで死屍累々といった感じで、ビニールがはがれ、骨がおり曲がり、うち捨てられたビニール傘がいくつも散乱していた。わずか250メートルぐらいの間に、数えてみれば7本も。
確かに昨日の風は強烈だった。目の前でビニール傘がオジャンになるシーンも見た。普通のナイロン傘でも、折りたたみの人はあきらめてたたんで手に持ち、濡れて歩いていた。長傘でも風を受け、骨が大きくたわんでいた。
そんな天気でビニール傘を差そうなどとはどだい無理な話。なのに、なぜかみんなビニール傘が好きなのだ。

最近では中国製のナイロン傘が駅のコンビニで500円も出せば買える。確かにビニール傘は300円ぐらいとそれよりも安いけど。
透明なので前が見えて安全などという利点もある。また、講師をしている大学で学生に話をしたら、「ビニール傘は透明なので、自分のおしゃれに影響しないから愛用している」という意見もあった。だがしかし、「使い捨て」というその存在の根本は変わらない。

「世界一雨に濡れるのが嫌い」と言われる日本人。また、多雨な気候でもある。そうした背景からか、日本の傘の年間生産数は1億本に上る。平均すれば、ほぼ日本人一人が一本、傘を消費していることになる。ビニール傘が占める比率がどれぐらいなのか調べられなかったのだが、少なからぬパーセンテージを占めているだろう。

「もったいない」は世界に誇れるすばらしい日本語だ。そして環境負荷軽減は、誰のためではなく、自分たちのために一層注力しなければならないテーマである。そろそろ、使い捨ての傘はやめにしたらどうだろうか。

人それぞれ好みがあるので、ここから先は参考までに読んでいただければ結構だが、筆者は使い捨てにしないためにも傘は自慢の逸品を使っている。皇室御用達、「前原光榮商店」の傘。常の傘の倍、16本の骨が優美なシルエットを描く。当然、風雨にも強く、昨日もびくともしない丈夫さを見せてくれた。骨の数だけでなく、素材や細部の作りにもこだわった商品は、1万円台前半から、高いものは20万円ぐらいまである。筆者のものは一番安いぐらいのレベルなのだが、やはりうっかり電車で忘れるわけにはいかないので、いつもしっかりと握りしめている。しっかりと手入れもする。そうして、もう何年も使っている。

「いいものをながく」。
筆者はいろいろなモノに対してオタク的な所があるのだが、モノを買うときには「いいものをながく」をモットーにしている。モノにこだわり、大切にながく使うということは、今日の環境負荷軽減の取り組みにも沿っているはずだ。まずは、ビニール傘をやめることを提言したい。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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