おいしいトーストを食べたい――。そんな消費者ニーズに応えるかのように、高級トースター市場で“アツアツ”の状況が続いている。 先陣を切ったのは、バルミューダが2015年に発売した「バルミューダ ザ・トースター」だ。当時、トースターの価格は数千円が主流だったのに対し、ザ・トースターは2万2900円(税別、現在は2万3500円)。ケタ違いの価格に対し、業界からは「そんなモノは売れるわけがないでしょ」といった声もあったが、家電量販店などで並べたところ、売れに売れた。[土肥義則,ITmedia]
では、デザインをどのように変更すればいいのか、社内外で何度も議論しました。パンを焼いているシーンをイメージするには、どうすればいいのか。キッチンに置いて「いいなあ」と感じるのは、どんなデザインなのか。形や色は、どうすればいいのか。こうした議論を重ねていく中で、「ボタンを取る」という話になりました。
土肥: ボタンを取ることに、抵抗勢力は出てこなかったですか?
内田: 「このデザインでいきましょう」と伝えても、従来のトースター開発に長く携わってきた人にとっては、ちょっと寂しい気持ちがあったのかもしれません。お客さまも長く使われているので、「残したほうがいいのでは?」といった声もあったのですが、徹底的に研ぎ澄ます方針を掲げて、シンプルなデザインに落ち着きました。
デザインを変えるということは、実は大変な作業がありまして。前面をガラスにしたわけですが、一体感を出すために継ぎ目をなくしました。また、ハンドルは細いモノを使うことに。当初、強度の問題で予定していたモノを使うことはできなかったのですが、他の商品からの知見を集めて、いまの細い形状を採用しました。さらに、デザインを変えたことで、機能性や安全性に問題が出てはいけません。そうした問題を一つひとつクリアして、商品を完成させることができました。
土肥: そんなこんなで今のデザインに落ち着いたわけですね。2月に発売して、前年比2倍ペースで売れてるということですが、以前であれば「バルミューダにしようかな、それともアラジンかな」といった会話をしている消費者の選択肢の中に、なかなか入ることができなかったのに、いまでは「いや、パナソニックのコレでしょ」といった人がじわじわ増えてきたということでしょうか?
内田: だと思います。
高級トースター、今後は?
土肥: ここで気になることが一つ。バルミューダのザ・トースターが誕生して、今年で6年目。高級&オシャレなトースターを発売するのは、ちょっと遅すぎませんか?
内田: 発売当初から、もちろん意識はしていました。当時、発売している商品の機能を高める形で動いていたので、すぐに方針を変えることはできませんでした。高級トースター市場は盛り上がりをみせていましたが、それでもシェアは1~2%ほど。その市場に参入すべきかどうか、様子を見ていたこともあって、新商品をこのタイミングで販売することになりました。
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