コロナ後の世界観~自由と自制/成長と成熟

画像: N.Murayama

2020.04.25

ライフ・ソーシャル

コロナ後の世界観~自由と自制/成長と成熟

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

この新型ウイルスは私たちに3つの戦い──生物的な戦い、経済的な戦い、そして世界観を再構築する戦い──を強いています。本稿では、人間がもつ豊かな抽象化能力について触れ、そこからいかにコロナ後の世界観をつくりだしていくかについて述べたいと思います。

このワークシートについての答えは人それぞれにあるでしょう。私はこのウイルスのような100年に1度あるかないかくらいの大きな災禍時にあっては、3番めの社会への警鐘レベルにみなの目線を向けさせるのが、教育に携わる者として重要な役割であると自覚しています。

1番めの「生活への知恵」、2番めの「仕事への教訓」レベルは、個々人の部分最適・利己を中心とした答えになるでしょう。しかし、いまはそこを超えて、人類社会の全体最適・利他の観点からどうあらねばならないかを強く考えるべき転換点だと思います。

コロナウイルスが憎いと思う人も多いと思いますが、このウイルスは人類の教師とみることもできます。この2ヶ月間、各国は諸活動を凍結させました。人間の往来がなくなるやいなや、澄んだ空気が戻りはじめ、川が浄化されはじめたことをいくつかのニュースは伝えています。人類がこの惑星で健やかに暮らし続けていくために、ここからのメッセージは明白です。

このコロナ禍で一番喜んでいるのは、もしかすると地球かもしれません。地球という1つの生命体が健全さを取り戻すために、人類の個体数を減らしにかかるという大摂理がはたらいているのかもしれません。

そこで、もう1つアナロジーを用いたいと思います。このウイルスは人体に侵入するや、その人の呼吸器官である肺を蝕みます。肺が不全に陥った宿主(=感染者)は生命の危険にさらされます。皮肉にも、地球を1つの生命体とみれば、まさに地球の呼吸器官とも言うべき森林を蝕んでいるのは、人類の諸活動ではないでしょうか。すなわち人類が地球にとってのコロナウイルスだという見立てが成り立ちます。

◆コロナ後の世界観~自由と自制/成長と成熟

早晩、このウイルスに対する治療薬とワクチンが開発されれば、「covid-19」は普通の感染病に格下げになるのかもしれません。そして、人びとの接触活動が安全になり、完全終息となれば、各国は経済活動をいやまして再開し、旅行クーポンを発行して、航空業界・観光業界のV字回復を狙うでしょう。

そこで生計を立てる人たちの支援は大事ですし、私だって鋭気を取り戻しに旅に出たい。レストランでおいしいものを食べ、友人と語り合いたい。しかし、もう無制限にそうすることはできなくなったことを自覚すべきフェーズに入ったのかもしれません。

人類が「知足」「自制」という観念を真剣に受け入れ、その上で何十億人を食わせ、自然・地球と共生できる態度に変われるかが問われます。それは人類史上、最も大きな革命といっていいかもしれません。実際のところ、物資やマネーは極端な偏りがあるだけで、これをうまく取り分ける社会的システムを構築することは可能であると私は信じます。全体最適を願う叡智が、個々の人間の欲望を超えていくとき、その現実性がみえてくるのではないでしょうか。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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