かつて大みそかの紅白歌合戦のフィナーレは、日本野鳥の会のメンバーが舞台上から客席を双眼鏡でのぞき、観客が出す紅白のボードを数えて勝敗を決めるというのがお決まりの流れだった。 双眼鏡と聞いて真っ先にそんな光景が浮かんでくるのは、まさに昭和世代といったところだろうか。ところが、その双眼鏡がいまバカ売れだという。 日本野鳥の会の会員数が激増しているという話も聞かないので、双眼鏡のヒットとバードウォッチングはどうやら無関係のようだ。では、どうしていま双眼鏡が売れているのか。そこには双眼鏡自体の高性能化と女性からの需要が大きく関係しているようだ。今回は、双眼鏡ヒットの裏側について調べてみよう
一方、宝塚歌劇団も、公演チケットが発売されれば即日完売が続いている。宝塚大劇場(2550席)、東京宝塚劇場(2069席)の2つの大ホールで、毎日のようにミュージカルなどの公演が行われているのだから、こちらもその売り上げは相当なもの。ジャニーズも宝塚も、ファンの主流は女性で、そんな彼女らが舞台上のアイドルを間近に感じるために高機能双眼鏡を求め、それが市場拡大に大きく作用しているというのだ。かつてヨーロッパの上流階級を席巻したオペラグラスの時代が、日本に再来しているといえる。
双眼鏡人気を押し上げる、女性に支持された機能とは
ジャニーズ系アイドルのコンサートや宝塚の舞台を楽しむために、多くの女性ファンが双眼鏡を求めている。しかも、5万〜8万円台という高価な商品が中心だという。一般的な双眼鏡と比べても高価な部類に入りそうだが、なぜそんなに高い商品が人気なのだろう。それは、彼女たちが重視する機能が「手ブレ防止機能」であり、購入するのはその機能を備えた「防振双眼鏡」だからだ。
ここ数年、大手光学メーカーはカメラで進化させてきた手ブレ防止機能を双眼鏡にも応用。その結果、8〜10倍といった高倍率でも手ブレせず、舞台上のアイドルの表情を鮮明に見ることができる双眼鏡が市場に登場。これが現在の双眼鏡人気への影響が大きいと考えられる。巨大なドームやスタジアムの最上段の席からも、臨場感たっぷりの公演の細部や、アーティストたちの表情を楽しむことができるというわけだ。
キヤノンでは、これまで手ブレ防止機能を作動させるためには、双眼鏡についているボタンを押し続ける必要があったが、昨年にはボタンを1回押せば5分間作動し続ける新タイプを登場させた。また、本体重量も420〜430グラムと、高倍率ながら軽量設計となっている。これには、彼女たちがアイドルの応援グッズなどを持つことを考慮し、女性が片手で持っても負担がないようにとの配慮が込められているのだ。
また、女性が使うからといって、ピンクなどの女性らしいカラーリングや見た目の可愛さなどはあまり重視されていない。あくまで機能重視で、黒やアースカラーの無骨なタイプが主流となっていることも特徴のひとつだ。これはある意味、男性がアウトドアで使用するとしても、十分に耐えられるモデルということにもなる。
量販店などではコンサートに特化したラインナップも
大手量販店のビックカメラ有楽町店では、双眼鏡売り場に東京ドームや横浜アリーナの座席表を掲示し、席の位置によってどのタイプの双眼鏡がおすすめかを紹介するなど、バードウォッチングや天体観測よりも観劇用に特化したチカラの入れようだ。それほどコンサートには双眼鏡が必需品であると、多くの人に認知されている証拠でもあるだろう。
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