かつて大みそかの紅白歌合戦のフィナーレは、日本野鳥の会のメンバーが舞台上から客席を双眼鏡でのぞき、観客が出す紅白のボードを数えて勝敗を決めるというのがお決まりの流れだった。 双眼鏡と聞いて真っ先にそんな光景が浮かんでくるのは、まさに昭和世代といったところだろうか。ところが、その双眼鏡がいまバカ売れだという。 日本野鳥の会の会員数が激増しているという話も聞かないので、双眼鏡のヒットとバードウォッチングはどうやら無関係のようだ。では、どうしていま双眼鏡が売れているのか。そこには双眼鏡自体の高性能化と女性からの需要が大きく関係しているようだ。今回は、双眼鏡ヒットの裏側について調べてみよう
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双眼鏡はいつ生まれ、どのように進化してきたのか
望遠鏡が発明されたのは17世紀初期といわれている。天文学の父ガリレオ・ガリレイ(1564〜1642年)が望遠鏡を自作した頃には、すでに双眼鏡の原型も存在したといわれるから、その歴史は400年以上を数えることになる。一般商用プリズム双眼鏡の世界第一号が発売されたのは1894年。ドイツのカール・ツァイス社の「カール・ツァイス8×20」だった。
日本で双眼鏡が作られるようになるのは20世紀に入ってから。1911年に藤井レンズ製造所が日本初の双眼鏡を開発したことに始まる。同社は日本最古の双眼鏡メーカーだ。その技術や製造・販売権は、1917年にニコンに引き継がれている。現在はカメラブランドとして名高いニコンだが、同社がカメラの製造・販売をスタートさせたのは太平洋戦争後のこと。双眼鏡事業は100年以上の歴史を持っており、この間にリリースした双眼鏡は700以上あるという。
過去、世界を脅かした大きな戦争の軍用品として、双眼鏡がその機能を進化させてきたことは想像に難くない。これが19世紀後半になると観劇用として便利でコンパクトなオペラグラスが開発され、ヨーロッパの上流階級の間で大ヒット。ドレスアップした人たちのファッションアイテムのひとつとなり、豪華な装飾を持つオペラグラスも多く作られた。
近年、双眼鏡が目を見張る人気なのはなぜ?
同じ精密光学機器でありながら、カメラに比べて地味な存在だった双眼鏡。これまでは、バードウォッチングや天体観測を趣味とするような人たちが、その需要を支えてきた。しかし、近年は双眼鏡市場に大きな変動が起きている。光学大手のキヤノンでは、双眼鏡の売れ行きは2013年頃から伸び始め、特定の機種に限れば販売台数は5年前の3〜5倍にも伸びているという。なぜ、そのような急成長を遂げているのだろうか。
実は、その急成長を支えているのは女性だといわれている。しかし、女性がバードウォッチングや天体観測に目覚めたというわけではない。ジャニーズや宝塚歌劇団の熱狂的ファンたちが、コンサートでお目当てのアイドルをじっくりと見るために、高機能の双眼鏡を手にとっているというのだ。
ジャニーズ、宝塚歌劇団が、市場拡大に大きく作用
近年のジャニーズ人気は、ひと頃のそれを大きく凌駕している。特に「嵐」が2020年末での活動休止を発表してからというものの、もともと250万人といわれていた彼らのファンクラブの会員数は30万人も増加。その会費だけでも15億円にのぼるとされている。さらに昨年行われた結成20周年全国ドームツアーは、全50公演で総動員数は237万5000人。コンサートチケットとグッズの売り上げだけでも約200億円と目されているのだ。もちろんジャニーズのアイドルは嵐だけではないので、その経済効果は計り知れない。
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