トヨタ自動車の豊田章男社長は今年1月6日(日本時間7日)、世界最大の国際技術見本市「CS」のプレカンファレンス(米・ラスベガス開催)で、人とあらゆるモノがインターネットでつながる実証都市「コネクティッド・シティ」を富士山麓の工場跡地(静岡県裾野市)に建設すると発表した。 コネクティッド・シティ(つながる街)は、いわばトヨタブランドのスマートシティで、2021年の初頭に着工。自動運転をはじめとする次世代技術の実験場とここを位置づけ、実際の街づくりを通して新開発の技術やサービスの具現化を目指す。整備が進めば、5年以内に人が住んで生活を始めるという。 自動車メーカーがゼロから街をつくる異例の取り組みとして、早くも世界中から注目を集めるトヨタのコネクティッド・シティ構想。日本のモノづくりを支える巨大企業が挑む、壮大なプロジェクトのロードマップに迫る。
■街の各ブロックに人々の集いの場となる公園・広場を設け、住民同士のリアルなつながりやコミュニティの形成も目指す。
デンマーク出身の著名建築家が都市設計を担当
こうしたウーブン・シティの都市設計は、デンマーク出身の建築家ビャルケ・インゲルス氏が担当。氏がCEOを務める「ビャルケ・インゲルス・グループ」は、ニューヨークの新たな第2ワールドトレードセンターや米Google本社の新社屋など、これまで数多くの著名なプロジェクトを手がけたことでも知られる。
今回、豊田社長とともに「CES」の発表会に臨んだインゲルス氏は、「コネクティッド・自動運転・シェアリングのモビリティサービスは、現代の新しい暮らしの可能性を広げるだろう。今回のプロジェクトは、トヨタのエコシステムによって幅広いテクノロジーや業界と協業し、未来の新しい都市のあり方を模索するユニークな機会だと考えている」とコメント。
同じく、豊田社長も壇上で「私たちのプロジェクトは、ゼロから街をつくり上げる非常にユニークな取り組みとなる。ウーブン・シティでは、将来の暮らしをより良くしたい方、このユニークなチャンスを研究に活用したい方、そして、私たちと一緒にモビリティサービスを追求していきたい方……すべての皆さんの参画を歓迎する!」と力を込めて強調した。
スマートシティ開発の課題を示すトロント市の事例
ちなみに、自動運転やつながる技術を活用したスマートシティ構想は、米Googleのグループ会社が計画を進めるカナダ・トロント市のプロジェクト例がある。
これはトロント南東部のウォーターフロントエリアを再開発し、およそ800エーカー(東京ドーム約69個分)におよぶ次世代都市を構築するビッグプロジェクトだ。交差点には自動運転走行を円滑にするセンサーが設置され、街のあらゆる場所で収集したデータは、住民の安全・快適な生活をサポートするサービスに生かされるという。
しかし、2017年にプロジェクトの計画が発表されると、同社が収集するデータやプライバシーの取り扱いを懸念する意見が、地域の団体や一般市民から続出。周辺住民からは「実験室のモルモットになってしまう」「テック企業が支配するディストピア(暗黒郷)が形づくられようとしている」といった反対の声が次々と上がり、結局、プロジェクトを支援していた米政府とトロント市は2019年秋に計画を大幅に縮小する判断を下した。
こうして、巨大テック企業が描くトロントのスマートシティ構想は、住民の反対運動という思わぬ展開で暗礁に乗り上げてしまったのだ。
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