改札を入ったらあとは電車に乗って移動するだけ。そんな駅の使い方の常識が変わりつつある。 例えば、乗降客の多い大都市のターミナル駅では、駅ナカの充実ぶりが10年以上から話題になり、飲食店はもちろん書店、日用品を扱うおしゃれなショップが軒を連ねている。駅ナカ限定のスイーツなども話題となり、そうした商品目当てに行列ができることも珍しい光景ではなくなっている。 さらに最近の傾向として、鉄道会社はせっかく構内に入った乗客に、電車賃だけでなく、あの手この手でお金を落としてもらおうと躍起になっていることをご存じだろうか。飲食店や書籍や日用品などの小物が気軽に買える駅の風景は平成の時代に急速に進化したが、令和の時代になって、ついに個室型のシェアオフィスまで誕生したというのだ。駅構内に設置された個室型のシェアオフィスとは、いったいどんなものなのか……、果たして定着するのか……、その中味を調べてみた。
●使い道例5/休息をとる
仕事や買い物などで疲れて駅にたどりついたら、ここでコーヒーでも飲みながらゆっくりと休息をとることができる。人の多い喫茶店とはちがって、個室であれば静かなうえ、昼寝・休憩オーケーといった便利さも。
●使い道例6/個人レッスンが受けられる
立川駅などに設置されている二人用のブースを使えば、たとえば先生とマンツーマンで英会話のレッスンを受けることもできる。もちろん英会話に限らず、二人でゆっくり話をすることもできる。
使用例として6つを挙げてみたが、ビジネスユースに限らず、個室型オフィスではすでにさまざまな用途に利用され始めている。これらはまだ月並みな利用法に過ぎず、今後の展開によっては思いがけない使い道を発見する可能性もある。他の使用者に迷惑をかけないモラルさえ守れば、その使い道は無限にひろがりそうだ。
高まる駅の多機能化。滞在するエリアとしても成長
駅は、これまでのような単なる乗り換えの場ではなく、人が集まる空間としての付加価値を持ち始めている。鉄道会社は、ここになるべく長く滞在してもらって、できればお金を落としてもらいたい。そのための工夫を懸命に凝らし始めているのだ。
東京駅丸の内地下改札付近にできたコワーキング型の「STATION DESK」は、完全な個室ではないものの、他人とはきっちり仕切りされた半ブース型で、集中して仕事や学習などに臨むことができる。
2018年4月から、東京メトロでは朝の通勤時間帯に勉強に活用できる「メトロde朝活」を駅構内で不定期に開催している。朝7時30分からのスタートで、たとえば講師から「人前での話し方教室」や「資産運用の方法」などを学ぶことができる。料金は30分で2000円ほど。
多機能化といえば、駅で簡単にお金が出し入れできるようにもなった。東急は、東横線や田園都市線の駅構内の券売機で銀行預金を引き出せるサービスを始めた。ゆうちょ銀行や横浜銀行と組み、両行の口座を持つ顧客がスマートフォンアプリ上で預金の引き出しを申し込むと、専用のQRコードが発行され、それを券売機の読み取り口にかざすと預金を引き出せる。銀行やATMにわざわざ出向かずに済むと、利用客には好評だ。
──駅を舞台に、「時間価値の向上」が鉄道会社によって図られているのは確かなようだ。今後どんな展開をみせるのか、そして大都市に限らず、地方にどんな形で波及していくのか、今後を見守りたい。
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