改札を入ったらあとは電車に乗って移動するだけ。そんな駅の使い方の常識が変わりつつある。 例えば、乗降客の多い大都市のターミナル駅では、駅ナカの充実ぶりが10年以上から話題になり、飲食店はもちろん書店、日用品を扱うおしゃれなショップが軒を連ねている。駅ナカ限定のスイーツなども話題となり、そうした商品目当てに行列ができることも珍しい光景ではなくなっている。 さらに最近の傾向として、鉄道会社はせっかく構内に入った乗客に、電車賃だけでなく、あの手この手でお金を落としてもらおうと躍起になっていることをご存じだろうか。飲食店や書籍や日用品などの小物が気軽に買える駅の風景は平成の時代に急速に進化したが、令和の時代になって、ついに個室型のシェアオフィスまで誕生したというのだ。駅構内に設置された個室型のシェアオフィスとは、いったいどんなものなのか……、果たして定着するのか……、その中味を調べてみた。
実際に、この駅ナカ個室オフィスを利用した体験者の声を聞いてみると、「ひと通り営業で得意先をまわったあと、あと一件立ち寄りたいと思ったとき、このボックス内で資料を整理し、アポイントをとることができた。とても使い勝手がよい」と、50代の男性は絶賛。
オフィスに戻ってしまえば、あらためて外出するのは大変だし、時間も浪費するが、会社へ戻る途中の駅なら、引き返したり、まわり道したりする無駄が省けてなにかと便利だ。こうした点から、ビジネスマンにとって重宝する施設になりそうだ。
JR東日本では各駅での実績に自信を持ち、今後は改良を重ねながら、とりあえず30駅に設置を広げる方針でいる。
ビジネスユースにとどまらない、意外な使い道も
JR東日本は「働き方改革のサポート」にと声高に叫び、“仕事に便利”とうたっているが、実際にブースを目にした人たちにとっては、さまざまな用途で使えることが見えてきた。それはビジネスユースに限らない。
●使い道例1/学生たちの自習室代わりに
学校帰り、塾に向かう途中の駅で、ここを勉強の場として利用している子ども、学生たちが現れている。このブースを使って、手っ取り早く予習や復習ができるということだ。
●使い道例2/他人に聞かれたくない電話をする
携帯電話が当たり前の時代。いつでもどこでも電話ができる便利さはあるが、そのぶん、通話内容を人に聞かれる心配もある。このブース内なら誰にも聞かれずに、内緒の話や込み入った話ができる。そして、これはある意味滑稽な話だが、時代が進んだことによって、今ではまったく見かけなくなった電話ボックスへの“先祖返り”が起こっていることになる。
●使い道例3/面接やデートに備えての身だしなみチェック
大事な人と会う前や大切な商談前に、個室に入って気合を入れ直したり、資料を読み返したり……といった作業ができる。また、身だしなみなどをチェックするにも個室はうってつけ。これまで駅ナカのトイレの個室で着替える必要に迫られた人も多いと思うが、汚れたトイレでは窮屈さや不便さを感じることが多かったものだが、ブース内ならそうした対応にも個室感ならではのメリットを味わえる。
●使い道例4/手軽に集中できる
人の目を気にすることなく、誰にも邪魔されずに仕事ができるのは大きなメリットだが、ほかにも趣味に没頭することもできる。これまで、駅の構内でひざを折って地べたにかばんを置き、ひざの上でメモを取ったり、パソコンを操作したりするビジネスマンの姿をときおりみかけたものだが、今後はそうした人々は激減するかもしれない。
そのほか、静かな個室で購入した菓子折りにつけるお礼状を書くことも可能であるし、一人で集中しながら作業する場面で有効活用できる。
次のページ高まる駅の多機能化。滞在するエリアとしても成長
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.17
2009.10.31