いよいよ2020年。今年初の祝日「成人の日」が過ぎる頃になると、お正月気分から日常モードに戻っている人がほとんどだろう。しかし今年はオリンピックイヤーということもあり、世間はどこか浮かれた雰囲気すら漂わせている。 その一方で2020年は、もう何年も前から「2020年問題」が指摘されていたことは周知の通り。「2020年問題」とはビジネス、不動産、教育、福祉などさまざまな分野で多くの社会問題が顕在化し、わが国の大きな転換点となる年のことを指す。その分岐点が、まさに今年なのである。
高齢者にとっては、ガラケーでは体験できなかった絵文字や写真を使った家族や仲間への無料の連絡手段はもちろん、スマホがあれば心拍数、血圧、歩行数などの基礎的な健康情報が日々取得できるうえ、旅行の予約にも活用できることになる。そうした便利さから、ガラケーからスマホに乗り換えた高齢者は、次第に他の操作方法を覚えていく欲求が高まり、自らが使っているアプリの操作方法を友人・仲間同士で教えあうなどの方法で、“つかいこなし”の範囲が広がっている。
この点について携帯大手もあらためて注目しており、今後ますます高齢者へのアプローチが加速していくだろう。
“おひとりさま”の終活に、金融機関も本腰!
身寄りがいない、いわゆる“おひとりさま”の高齢者も増加中だ。内閣府調査によると、次の数字が明らかになっている。
●2015年 → 一人暮らし高齢者は592万人。
●2040年 → 一人暮らし高齢者は896万人にまで増加。
この“おひとりさま”に注目しているのが、経営悪化にあえぐ金融機関だ。
例えば三井住友信託銀行は、2018年、銀行のOBやOGによる一般社団法人「安心サポート」を設立。このサポートは、例えば高齢者の身元保証人になったり、老人ホームの入居手続きや病院の入退院手続きを代行したり、葬儀の手配、遺産整理など、死後の事務手続きなども担う。
また、認知症などが進んで判断能力がなくなった時点においては、財産管理などをする任意後見人の役割も担う。利用者は委託手数料を払い、老人ホームや病院などの費用、葬儀費用などは銀行に預けた信託財産から支払われる。
これまでNPO法人や司法書士などが担ったサービス例はあったが、銀行がこうしたサポートを代行するのは極めて珍しい流れとされている。家族や仲間とのつながりがない人も、銀行などとこうした形でつながりができることは、大きな魅力となるのではないだろうか。
シニア一人ひとりに寄り添ったサービスに期待
今回ご紹介した新ビジネスの例にとどまらず、2020年に生じる社会的な問題・課題の顕在化を契機に、さらに新しいビジネスも続々と生まれてくることになるだろう。ビジネスターゲットとされる高齢者は今後さらに増加するのだから、どのビジネスにも大きな期待がもてるはずだ。
しかし、それらが単にビジネスとして成立するかどうかではなく、本当に高齢者の一人ひとりに寄り添ったサービスなのかどうかが一番大切なことであることは間違いない。高齢者を食い物にした犯罪があとを絶たない中、シニア市場を狙う企業には、常にその視点を忘れずにいてほしいと願う。
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