地方自治体への寄付金制度として2008年に導入され、いまや全国で300万人以上が利用する「ふるさと納税」。その2018年度実績が総務省から発表され、自治体間の格差問題があらためて浮き彫りとなった。
返礼品の調達費や経費が受け入れ額を上まわるケースも
ふるさと納税によって赤字が生じる要因は他にもある。返礼品の調達費や送料・PRなどの経費が、受け入れ額を上まわるケースだ。
総務省の同調査では、返礼品の調達費が受け入れ額に占める割合は35.4%で、前年度(2017年度)から3.1ポイント改善。ただ、今年6月から始まった指定制度で総務省が要請する「30%以下」は上まわったままだ。さらに、送付費やサイト利用料などの経費率を含めた合計では55.0%となり、前年度(55.5%)とほとんど変わっていない(図表参照/2018年度ふるさと納税 諸業務にかかった費用・割合)。
具体的に見ると、返礼品の調達費比率が30%以上だったのは、全体の25%に当たる454団体。経費率も含めると、全体の35%に当たる620団体が50%を超えていた。このうち、調達費・経費とも比率がオーバーしているのは329団体、いずれか一方がオーバーしているのは398団体で、合計すると全体の40%近い727団体が指定制度の条件を満たしていなかったことになる。
指定制度については「条件の根拠があいまい」「実情にそぐわない」など、各自治体から反発の声が上がっているが、寄付額ばかりを目標にして、肝心の手取り(企業でいえば利益)を考えていない自治体経営の甘さも露呈したようだ。
指定制度から除外された4市町が受け入れ額の1~4位に
一方、ふるさと納税の受け入れ額ランキングを見ると、大阪府泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町が1~4位にランクインし、合計額は4市町だけで1112億円と全国の2割強を占めた(図表参照/2018年度ふるさと納税 受け入れ額ランキング)。
先述したように、トップ4を占める各市町は、過度な返礼品で2018年度に多額の寄付を集めたとして、今年6月から始まった指定制度から除外されており、なんともワケあり(?)な結果となった。
とはいえ、4市町とも寄付の増加によって財政状況が1年間で急回復し、貯金にあたる基金も大幅に増加。各市町の2018年度末の基金残高は、大阪府泉佐野市が287億円(前年比2.7倍)、小山町が106億円(同比4.4倍)、高野町は85億円(同比4.6倍)、みやき町は139億円(同比30%増)と急増している。
とくに、過去の公共事業による債務が大きかった泉佐野市は、2012年度まで地方財政健全化法で「破綻懸念」の自治体に分類されていたが、2018年度のふるさと納税の収入により、平均的な市町村と同程度まで財政指標が改善したという。
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