ここ近年、金融とテクノロジーを掛け合わせたフィンテックなど、「◎◎テック」と冠した多様なサービスが次々と登場している。 そのひとつとして、いま国内外の企業から注目されているのが、人事関連の業務を担う「HRテック」と呼ばれるサービス分野だ。 社会的に浸透したフィンテックと比べると、日本での認知度はまだまだ低いが、アメリカを中心とした海外市場の拡大にともなって、ここ1~2年の間に日本企業でも導入する動きが活発化。これを受けて、さまざまなHRテックサービスを開発・提供するスタートアップやIT企業も急増している。 そこで今回は前編と後編に分けて、アメリカや日本のHRテック事情にフォーカス。HRテックのサービス事例や導入メリット、普及の背景や今後の課題について詳しく見ていくことにしよう。
Workdayの最大の特徴は、給与管理や福利厚生、採用といった人事・労務関連のHRテックだけでなく、収益や経費、調達を管理する財務面も含めた統合的なプラットフォームを提供していることだ。クラウドベースの一元管理システムにより、企業活動に欠かせない人事と財務のプロセスをシームレス化することで、社内組織のデジタルトランスフォーメーション(※)を容易に実行することができる。
同社のシステムは、Amazon、ジョンソン・エンド・ジョンソン、VISA、Yahoo!、ヒューレット・パッカード、モルガンスタンレーなど、世界的に展開するグローバル企業を中心に約4000社で導入。ソニー、日立、住友化学、トヨタ自動車、日産自動車、楽天、ファーストリテイリングなど、日本を代表する大手企業でも多く採用されている。
(※)デジタルトランスフォーメーション……デジタル技術を浸透させることで、企業活動や人々の生活をより良いものへと変革すること。
日本のHRテック開発企業が手がけるサービス事例
対する日本でも、以前より給与管理ソフトなどのHRツールは数多く存在したが、先端テクノロジーを活用したHRシステムの導入・開発は、アメリカなどに比べるとかなり遅れていた。しかし、海外市場の拡大や社会的背景の変化にともない、2017年頃から日本でもHRテックを導入する企業、開発する企業ともに急増している。
では、日本におけるHRテック事情はどこまで進んできているのだろうか。
ここからは、国内で多くの導入実績をもつ、日本のHRテック開発企業と主なサービス事例をいくつか紹介しよう。
【クラウド人事労務システム/Smart HR】
HRテックのスタートアップとして急成長する「Smart HR(東京都港区)」では、各種保険の手続きや入社手続き、年末調整や給与明細など、労務関連の煩雑な業務を一括して担う人事労務システムを提供。従業員みずからが情報を入力するクラウドシステムを用いて、書類の自動作成から申請、手続きまで、短時間・ペーパーレスで完結できるという。
同社のクラウドシステムは、テレビ朝日、メルカリ、星野リゾート、オンワードなど、大手企業を含めた2万社以上で導入されている。
【ヒューマンスキル可視化システム/エスユーエス】
技術者派遣事業を手がける「エスユーエス(京都府京都市)」は、派遣する社員の能力や適性、資質などを「見える化」するシステムを、慶應義塾大学や中部大学と共同で開発。社員にアンケートを実施し、約200問の質問に対する回答をシステムが分析・点数化する仕組みだ。
評価の対象となるのは、本人の指導力・周囲への説得力・業務遂行力などの基礎能力と関連項目で、システムがそれぞれ100点満点で自動的に点数化。
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