ものやサービスの値段は時代によって変わるものです。「高い」「安い」の基準になっている貨幣の価値も時代によって大きく変わります。 さまざまな分野のものやサービスの「お値段」を比較してみましょう。 朝晩はしのぎやすくなってきたものの、日中はまだまだ蒸し暑さが続きます。生鮮食料品を保管するにも、スイカやビールを冷やすにも、冷蔵庫が欠かせません。 昔はスイカやビールは井戸に沈めて冷やしていたといいますが、いまでは四季を通じて電気冷蔵庫なしの生活は考えられないでしょう。 今回は前回の洗濯機に続き、同じ「白物家電」と呼ばれる電気冷蔵庫のお値段の変遷を見てみましょう。
ところが反響は大きく、翌年は月産10万台に達します。オリンピックが開催された昭和39(1964)年には、全家庭の半分にまで普及しました。
同時にガス炊飯器も発売され、一時期には電気炊飯器を上まわるほどの販売数を誇ったといいます。この頃すでに自動保温できるもの、電子ジャー炊飯器なども発売されていました。
そして、昭和46(1971)年の電子ジャータイプは4000円ほどでしたが、その後は進化が著しく、マイコン制御で火加減を調節したり、さまざまな工夫が凝らされるようになりました。ちなみに、現在大人気を博している「かまど炊き」の初期バージョンともいえる「かまど炊き風」の保温釜を使った炊飯器は昭和53(1978)年当時に登場していますが、当時のお値段は1万9800円でした。
現在の炊飯器の進化は目をみはるものがあり、メーカー間で熾烈な開発競争が繰り広げられています。
目的別に炊き分ける機能、圧力IH、アルミ合金製の内釜に鉄を打ち込んだ打込鉄釜、遠赤外線仕様、高火力で炊き上げる炭釜、炊いたご飯が硬くならないスチーム保温機能……など、メーカーごとの“こだわり”が量販店にラインナップされ、選ぶ側の消費者はどれを選択すればよいか、悩んでしまうほどの充実ぶりです。
当然ながら、10万円以上する高級品も珍しくなく、“極め”と名がついた14万円(オープンプライス)の炊飯器も昨今登場していますが、こちらも高級品にもかかわらず、販売は好調の様子。
特に最近の傾向として、日本の炊飯器は国外からの観光客に高い人気があり、5つ6つと本国への持ち帰り用にまとめ買いするケースも珍しくないそうです。
── 家電の値段の変遷は食生活の変化ばかりでなく、女性の社会進出といった社会的へ変化もその背景にあることは間違いないでしょう。
その一方で、日本のメーカーが得意としてきた「白物家電」が苦戦しているようです。「白物」の冷蔵庫、炊飯器、洗濯機は、もはや古い時代の象徴なのかもしれません。
その証に、家電量販店に行くと少し前まで「ホワイト」が最も多かった家電コーナーが、いまでは「ブラック」「レッド」「ブラウン」と色とりどりかつ、よりどりみどり……。時代は「白物家電」から「色物家電」に確実に変化しているようです。
≪記事作成ライター:帰路游可比古[きろ・ゆかひこ]≫
福岡県生まれ。フリーランス編集者・ライター。専門は文字文化だが、現代美術や音楽にも関心が強い。30年ぶりにピアノの稽古を始めた。生きているうちにバッハの「シンフォニア」を弾けるようになりたい。
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