日本政府は今年(2019年)6月30日、クジラの資源管理を議論する「国際捕鯨委員会(IWC)」から正式に脱退。 これを受けて翌7月1日から、釧路や下関など全国各地の捕鯨拠点で、1988年以降中断していた商業捕鯨がついに再開された。 31年ぶりに商業捕鯨が再開されたことで、喜びに沸く関係者らの期待は高まっているが、鯨肉の国内消費量はピークから激減。IWC加盟国を中心とする海外では、依然として反捕鯨の世論も根強い中、今後は国際社会からの理解や国内消費の拡大が焦点となりそうだ。 そこで今回は、古くから日本人と深くかかわってきた「鯨食文化」の歴史を振り返りながら、国際的な捕鯨問題の背景と今後について考えてみたい。
国際的な捕鯨問題の背景にあるネガティブな構図
一方で、捕鯨・鯨食をめぐる海外からの風当たりは依然として強い。知的能力が高いとされる哺乳類を殺すのは、動物保護の観点からも許されないという理由だ。2004年には、和歌山県太知町でのイルカ・小型クジラの漁を批判的に描いた映画『ザ・コーヴ』がアメリカで上映され、アカデミー賞を受賞。イルカやクジラの血で海が真っ赤に染まった漁の映像はニュースなどでも取り上げられ、国内外でさまざまな意見が飛び交った。
たしかに、この行為を「残酷・虐待」と見る人もいるだろう。ただ、ここで重要なのは、価値観の違う他者を一方的に排除することではなく、違いを認めて共存することではないだろうか。グローバルVS.ローカルという価値観の対峙、異なるアイデンティティーへの嫌悪というネガティブな構図が、国際的な捕鯨問題の背景にあることを忘れてはいけない。
グローバリゼーションとローカリゼーション、多様なアイデンティティーの共存……。その実現は決してたやすいことではないが、かつて海外から奇異な目で見られていた日本の文化風習が、いまや世界中から注目されるジャパンブームを巻き起こしたのも事実である。
もちろん、日本も捕鯨支持の立場を主張するだけでなく、国際社会からの理解を得るために、明快な形で情報発信を続けていく努力が求められるだろう。そして、今回の商業捕鯨再開によって、鯨食が日本のローカルフードとして復活し、世界を動かすムーブメントとして広がっていくことを期待したい。
※参考/日本経済新聞、朝日新聞
≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫
20年以上にわたり、企業・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌・各種サイトなどの記事を執筆。長年の取材・ライティング経験から、金融・教育・社会経済・医療介護・グルメ・カルチャー・ファッション関連まで、幅広くオールマイティに対応。 好きな言葉は「ありがとう」。
【記事元】
日本クラウド証券株式会社 https://crowdbank.jp
日本クラウド証券メディア マネセツ https://manesetsu.jp
【転載元】
リーダーズオンライン(専門家による経営者のための情報サイト)
https://leaders-online.jp/
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.17
2009.10.31