日経新聞3月3日夕刊・生活面の「キャリアの軌跡」。マーケティング企画会社・株式会社ハウの大隈和子社長が紹介されていた。「女は男の3倍働かないと認めてもらえない」というフレーズが印象的だった。
大隈社長は第17代内閣総理大臣であり、早稲田大学の創始者・大隈重信侯爵のひ孫。外交官の娘として豊かな海外生活を長く続けていたが、33歳で二度目の離婚を経験。初のフルタイムでの仕事を探したという。クリスチャン・ディオールの美容部長、クリニーク・ラボラトリーズの日本支社マーケティング部長を経て、87年に広告代理店と共同出資でマーケティング企画会社・株式会社ハウを設立。社長に就任した。
一見鮮やかに見えるそのキャリアの軌跡とは裏腹に、紙面で<「女は男の3倍働かないと認めてもらえない」というのが持論。そのため子育ては母らに”おんぶにだっこ”。仕事に専念するための苦渋の選択だった。>と自らを振り返っている。
菅野美穂の主演ドラマにもなった人気漫画、「働きマン」。主人公の女性編集者は、仕事モードになると「男スイッチ」が入り、衣飾・寝食・恋愛も忘れ猛烈に働く。漫画は「仕事とは何か」「働く意義とは何か」そして「一生懸命働く人にとって、男女の性差など関係ない」ということをテーマとしていると思う。
しかし、現物を見たわけではないのだが、英国のタイムズ・オブ・ロンドン紙で『「働きマン」は日本の男女不平等を覆せるか』というテーマで取り上げられたらしい。正に大隈社長のごとく、「女は男の3倍働かないと認めてもらえない」象徴と見られたようだ。
女性、外国人、少数民族など多様性を受容し、人材確保と活用を促す「ダイバシティー・マネジメント」も、もっぱら日本では女性の管理職登用に関心が集まっているように思われる。男女雇用機会均等法施行以来22年が経とうとしているのに、男女格差はまだまだなくなっていないことの現れだろう。
仕事において女性にハンデがあるのは事実だ。しかし、それを乗り越えようとする女性は強い。前職では部下の過半は女性だったが、皆、優秀だった。既婚者や子供のいる者、シングルマザーもいたががんばっていた。
しかし、よく考えれば「認められるために人の3倍働く」のは女性だけの話ではない。自慢するわけではないが、筆者は新入社員の時から永く仕えた上司から「いい大学を出ているわけでもないお前が人より上に出たければ3倍働け」と仕込まれ育った。いろいろな意味でラディカルな上司だったが、「人の1.5倍の時間、倍の効率で働いて、3倍やれ」という教えには感謝している。
女性は確実に強くなっている。優秀になっている。徐々にではあるが、社会も平等になってきている。「仕事に男女の差など関係ない」という論には大賛成だが、うかうかしていると危ないのはむしろ男性の方だと思う。
もうすぐ4月。新しい年度になる。ここらで男も気を引き締めて、「人の3倍働こうぜ、Men!」
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2008.03.09
2008.03.14
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。