イノベーション創出の方法として注目が集まる「意味のイノベーション」。テーマである「意味」にフォーカスしながら、どのような社会変革を行なっていくべきか、社会学の知見を踏まえながら実例と共に論じます。
死ぬほど簡単に粗く内容を要約すると、「狂気」とされているものは時代によって賛美されたり排除されたりと、意味づけがめちゃくちゃ異なっていることを示している書籍です。こういう一見当たり前に見える事象や現象が実は全然当たり前じゃないことを看破するのは社会学の1つの特長で、自分がすごく好きなところです。生きづらさや差別や貧困などの社会課題を明らかにして、変革するための契機になると思うからです。
◆ 社会変革のための意味のビジネス
上述した『突破するデザイン』ではApple、任天堂Wii、スイスの時計ブランドSwatchなど、様々な意味のイノベーションの例が出てきて、どれも魅力的で鮮やかで興味深いのですが、自分としては、フーコーが『狂気の歴史』が扱ったような、社会的に抑圧され、偏っている現象や事象を解き放つための事業が、すごく革新的で最高にクールな「意味のビジネス」だと考えています。それはパワポ資料の1スライドで完結するような安易な市場の再定義とかポジショニングマップ、「デザインの力によるリブランディング」とは異次元の深度を持ちうるし、社会を変えること=膨大なマーケットを創造することなので、事業としてめちゃくちゃ儲かる可能性も内包していると思っています。
◆ illuminateという意味のイノベーション
そしてこれを地でいっている事業の1つが、自分も携わる生理用品のプロジェクトilluminateです。(※外部のアドバイザーやプランナーとしてではなく、筆者である布田が「中の人」として参画しています。)illuminateは、話題にあげずらく、こっそり買うことを是とする空気もあり、したがって適切な情報と商品が十分に行き渡っていない生理用品を知り、選び、購入することを通して、より多くの人が、より多くの選択肢を持ち、自由に選択できることをビジョンに掲げています。つまり生理や生理用品の意味を革新するプロジェクトです。
自分の身体には生理はこないし、参画をしたことを色んな人に話すとキョトンとした顔をされることもあるのですが、こういう思考の文脈があるから自分はコミットしました。社会全体の変革を射程にしていて、かつ個々人の私的なんだけど実はとても社会的な深いペインを解消しうる事業は、そうない。現在行なっているilluminateのクラウドファンディングで、代表のハヤカワ五味はデザインによる社会変革について言及してますが、デザインの機能の1つは情報整理で、情報とは意味です。デザインとは、本質的に意味を扱う道具なんだと思います。
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