ものやサービスの値段は時代によって変わるものです。「高い」「安い」の基準になっている貨幣の価値も時代によって大きく変わります。 さまざまな分野のものやサービスの「お値段」を比較してみましょう。
パンのお値段の変遷
今、みなさんは朝食になにを食べているでしょうか? 日本人の食生活は数十年前と比べて大きく変化しました。従来は朝食にご飯を食べるのが普通でしたが、現在ではパン、シリアル、めん類など、いろいろな選択肢があり、栄養ドリンクやお菓子類ですませる人もいるでしょうし、そもそも朝は食べない、という人も少なくないと思われます。
近代以降の日本人の食生活を大きく変えることになったきっかけを作ったのが、「パン」でした。
今回はパンのお値段の変遷を見てみましょう。
パンが初めて日本に入ってきたのは、16世紀のこと、ポルトガル人が鉄砲をもたらしたのと同時期とされています。長崎ではオランダ商人がもたらしたパンは、キリシタンの信仰との関係で製造禁止になることもありました。近代以降には、パンは明治政府の海軍・陸軍にも採用され、一般にも普及するきっかけを作り、明治7(1874)年には東京・芝の木村屋が売り出したあんぱんが宮内省御用達となり、人気を呼びました。
第二次世界大戦後には、GHQ放出の小麦粉を原料としたコッペパンは学校給食を通じて日本全国にまで広められました。パン食は主食として日本にすっかり普及しました。
日本人に主食として定着した「食パン」
日本人にとってパンといえばもっともなじみがあるのは、箱型のいわゆる「食パン」でしょう。
昭和5(1930)年の食パン一斤(450g)の価格は37銭。明治元(1868)年のかけそば一杯の値段は8厘(りん)程度、食パン一斤はかけそばの5倍程度したことになります。まだまだ高級品だったということでしょう。
この後、戦後すぐには1円20銭、昭和45年には50円程度の値段であったという記録があります。次第に朝食はトーストした食パンにコーヒーか牛乳、という習慣が普及していったのです。
ちなみに明治初年のあんぱんの値段は記録がないようですが、戦後には一個10円程度でした。現在木村屋のあんぱんは物価の上昇もあって180円ほどします。
朝鮮戦争、オイルショックなどの際に小麦粉の価格が上昇し、食パンが大きく値上がりしたこともありましたが、物価安定政策などで食パンは比較的安定した価格が続いており、現在ではかなり割安の食品ということになるでしょう。
現在、大手メーカーの食パンはコンビニなどで200~300円程度だと思われます。高級食パンと呼ばれるものの中には一斤500円以上するものもあるようですが、高級食パンブームが起きている昨今、銀座の有名店では1日に1000本が売れるそう。そして興味深いことに、全国的に見るとパンは関西のほうが消費量が多いようです。
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