今年(2019年)5月24日、行政手続きなどを原則、電子申請に統一する「デジタルファースト法」が、参議院本会議で可決・成立した。
とはいえ、2019年4月時点のマイナンバーカード発行枚数は約1666万枚にとどまり、所有するのは国民10人に対して約1.2人(12.8%)というのが現状だ。昨年秋の内閣府の世論調査では、53%の人が「カードを取得する予定がない」と回答。うち27%が、取得しない理由を「個人情報の漏えいが心配」と答えており、安全性に対する社会的な不信感は根強い。
加えて、カード普及のネックとなっているのが「利用価値の低さ」だ。マイナンバーカードの主な用途といえば……
「運転免許証に代わる身分証明書に使える」
「コンビニで住民票などの証明書が取得できる」
「ネットの確定申告に利用できる」
……などが挙げられるが、どれも「日常生活で必要不可欠なもの」というわけではない。カードがなくても事足りるのであれば、わざわざ手間をかけて取得する意味もないだろう。
さらに2020年には、制度開始時の2016年に交付されたカードが更新時期を迎え始める。カード本体の有効期限は最長10年だが、内蔵されている本人確認用の電子証明書は、発行から5回目の誕生日に有効期限が切れるからだ。カード取得者が「これまで必要を感じなかった」と更新しなければ、オンラインサービスの利用者はますます減ることになる。
政府が次々と打ち出すマイナンバーカード普及策
そこで、デジタルファーストを推進する政府としては、マイナンバーカードの取得・更新を促そうと、活用分野をさらに拡大する普及策を次々と打ち出し(図表参照)、カードを所有するメリットや利用価値をアピール。その一環として、これまで証明証として代用されてきた紙製の「通知カード」を廃止し、オンラインサービス利用者の減少を食い止めたい考えだ。
これらの施策の中で柱となるのが、健康保険を中心とした医療関連サービスだ。保険証は日常的に利用する人が多いため、代用できれば普及が進むとみられている。
過去の処方薬や特定健診の履歴データについては、政府が運営するサイト「マイナポータル」に入り、カードで本人確認すると閲覧できるようになる。個人の投薬や特定健診の情報を集約する社会保険診療報酬支払基金からデータが送られてくる仕組みで、転職・退職してもデータが蓄積されるので、医療機関の受診の際や健康管理にも役立つ。特定健診は2020年度、投薬履歴は2021年度に開始する予定だ。
本人・家族の医療費が一定額を超えた場合に税負担を軽くする医療費控除についても、2021年分の確定申告から申請手続きを完全自動化。こちらも利用者がカードを使って、国税庁のネット上で1年分の医療費の合計額が確認でき、領収書を保存していなくても、そのままネットで申告できるという。日本の医療費控除の申請者は毎年約750万人にのぼり、確定申告の負担軽減を多くの人に実感してもらうことで、カードの普及と公的サービスのデジタル化を加速させる狙いだ。
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