コンビニ大手のセブンイレブンとローソンは今年(2019年)5月、消費期限の迫ったおにぎりや弁当などの実質的な値引きを始めることを明らかにした。 これまでコンビニ業界がこだわってきた定価販売の原則を見直し、期限切れ直前の商品をリーズナブルに提供することで、食品ロスと廃棄コストの削減につなげる狙いだ。 ここ最近、コンビニをめぐっては24時間営業の是非が問われるなど、業界をとりまく環境は世論ともに厳しさを増している。人手不足問題や環境意識の高まりを背景に、社会との向き合い方の転換が迫られるコンビニ業界。その成長を支えてきた強固なビジネスモデルは、いま大きな曲がり角に差しかかっている。 今回は、食品ロス削減に向けた大手コンビニ2社の新たな展開・背景を追いながら、私たち消費者にも求められる「チェンジ」とは何なのか、考えてみたい。
こうした流れを受け、すでに大手コンビニ各社では今春から時間短縮営業の実験や、人手不足に対応するセルフレジの導入などを開始。そして今回、ついにセブンイレブンとローソンが、食品ロスの削減に向けて重い腰を上げた。
これまで24時間営業・定価販売・大量出店を軸に、本部が強い指導力を発揮してきたコンビニの成長戦略は、いま世論の高まりとともに転機を迎え、環境や労働問題に配慮した「持続可能なコンビニづくり」へと大きく舵が切られようとしている。
深刻化する食品ロスの削減に向けて、国も本格始動
ここ近年、世界的な課題となっている食品ロスについては、国も削減に向けて動き出している。国会では今年5月16日、廃棄食料を減らすための「食品ロス削減推進法案」が衆院を通過し、今国会で可決・成立する見通しだ。法案ではロス削減を国民運動とするとともに、政府に基本方針策定、自治体に推進計画策定、事業者には施策への協力を呼びかけ、政府と自治体には貧困世帯に食料を提供する「フードバンク」活動への支援も義務付けている。
環境省の推計では、日本国内の2016年度の食品ロスは643万トンに上り、国民1人あたりに換算すると、1日茶わん1杯分(136グラム)の食糧を捨てている計算になる。これは国連世界食糧計画(WFP)が1年間に途上国などに援助する食糧の約2倍にあたる量だ。内訳は食品工場やスーパー、コンビニなどから廃棄される「事業系」が352万トン、各家庭から出る「家庭系」が291万トンと、購入後に消費者が捨てている食品類もかなりの量を占める。一方で、世界では現在も9人に1人(約8億人)が食糧難による栄養不足で、健康障害や命の危険にさらされているという。
コンビニの取り組みに関心を持ち、支持していくことも大切
このように、私たち日本人も加担している食品ロスの深刻な事態を考えると、今回、見切り販売に踏み切ったセブンイレブンとローソンは、大きな英断を下したといえるだろう。コンビニは幅広い世代が利用する身近な存在だからこそ、その取り組みが社会全体に与える影響は大きい。コンビニ各店のオーナーにとっても、食品ロスによる廃棄コストの負担が減れば、いま以上の収入増と経営の安定が期待できる。
もちろん、私たち消費者も変わらなければいけない。社会的に環境意識が高まったとはいえ、それを実践する人はまだまだ少ないのが現状だ。期限の新しい商品を棚の奥から選ぶなど、食品の鮮度を過度に気にするのはやめ、欠品にも寛容になること(欠品の苦情が出ると店は過剰に仕入れ、結果的にロスを増やす)。そして、食品関連の企業や販売事業者の取り組みに関心を持ち、良しとすれば支持し続けることも大切だろう。
筆者自身もコンビニユーザーの一人として、各社の新たな動きや活動に注目しつつ、今後、近所の店で見切り販売の商品を見かけたら、すすんで購入していきたいと思う。
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