お金持ちの家に招待されたとき、家の池で見かける優雅に泳ぐニシキゴイ。 正式に「錦鯉」と書くが、色鮮やかな色彩や斑点の体色が「錦」にたとえられ「生きた宝石」とも呼ばれている。業界団体の「全日本錦鯉振興会」は、日本の「国魚」とも位置づけている。 自宅の庭でニシキゴイを鑑賞することは、庶民からはちょっとイメージしにくい贅沢な趣味だが、これがいま世界的なブームで、とくに外国人の間で人気なのだという。桜の花や富士山などと並んで日本が誇る美しさの象徴という声も聞こえるが、一方で単なる観賞用ではなく、ひと儲けをたくらむ投資として注目されている側面もあるとのこと。さて、実態はどうなのか。
外国人業者が、1匹2億300万円の値付け!
今年2月上旬、東京流通センターでワールドカップ「全日本総合錦鯉(ニシキゴイ)品評会」が開催された。
そこで見事1位を獲得したのは、広島県の養魚場が飼育し、昨年の秋に新潟県で行われた品評会で1匹2億300万円という史上最高値で中国人オーナーが落札したニシキゴイだった。白地に赤い模様が広がり、素人目にもその美しさは理解できる。
これまでも数千万円前後の値がつくことはあったが、最近は外国人の参加が増え、その影響で落札価格がどんどん上昇しているという。今回の金額も、外国人バイヤー同士による競り合いの結果だった。
ただしこのニシキゴイ、日本中がブームに沸き立っているかといえば、実はあまりピンとこない。どこでそんなに盛り上がっているのかと思えるほどだ。
昭和50年代、目白御殿と呼ばれた田中角栄元首相の自宅庭には1匹数百万円のニシキゴイが泳いでいると騒がれ、いっとき日本の富裕層の間でもニシキゴイはブームになったが、その後のオイルショックや、マンションなど住環境の欧米化などでブームは下火となり、その後大きく浮上することはなかった。
今でも、国内のニシキゴイの需要が急に大きく伸びているというわけではない。
欧米からの引き合いがすごいニシキゴイ
ところが、現在の日本でのニシキゴイの生産量はどんどん増えている。そのブームを支えているのが外国人の富裕層だ。とくに中国、香港をはじめとするアジア、さらには欧米からの引き合いがすごい勢いとなっている。
農林水産省作成のグラフを見てもわかるように、ニシキゴイの輸出額は平成20年の22.2億円から平成29年には36.7億円と、150%以上の伸びを示している。
なかでも、香港、オランダ、ドイツ、米国などで急速に増加。各国の富裕層が積極的に購入しているとみられており、現在、日本で生産されるニシキゴイの7割以上は海外に輸出されている。
新潟の雪解け水から生まれた「泳ぐ宝石」
ニシキゴイの国内での生産拠点は新潟県。はるか昔の江戸時代、食用として飼われていたマゴイの中に突然変わった柄のコイが出現した。その姿の色合いが非常に美しかったことから、観賞用として大事に育てられ、何代にもわたって交配を継続。約200年の歳月を経て現在の見事なニシキゴイに仕上げられたという。
2016年には、新潟県長岡市の小千谷が「錦鯉(ニシキゴイ)発祥の地」として、静岡のわさびや、志摩の真珠などと並んで日本の農業遺産第一号に認定されている。ミネラルをたっぷりふくんだ「雪解け水」が美しい成長を促していると地元の人たちは自慢する。
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