国内外の高級ブランドや老舗店が軒を連ねる東京・銀座で、いまホテルの開業ラッシュが続いている。 ここ近年、国内では訪日観光客の急増にともない、格安なビジネスホテル・ゲストハウスなどの宿泊施設が増え、民泊の普及に向けた規制緩和も進められてきた。ただ今回、銀座に顔をそろえるのは、滞在そのものを満喫できる新形態のホテルや、価格帯の高いハイブランドが多く、それぞれに異なる個性や価値観を打ち出したコンセプトメイクを特徴としている。 では、どのようなスタイルのホテルが銀座に誕生しているのだろうか……。その特徴やコンセプトとともに、激戦化する銀座ホテル競争の背景にフォーカスする。
独自のコンセプトを打ち出す個性派ホテルも
その他、従来のホテルにはない独自のコンセプトや付加価値を打ち出し、大手ブランドとの差別化を図る宿泊特化型のホテルも登場している。
【MUJI HOTEL(ムジホテル)/2019年4月開業】
生活雑貨店を展開する良品計画が、銀座3丁目の外堀通り沿いに開業した日本初の無印良品のホテル。ビルの地下1階~6階が世界最大規模の無印良品の旗艦店、7階~10階がホテルの客室(全9タイプ・79室)となっており、6階にはフロントやギャラリー、和食レストラン、地下1階にはダイニングレストランも入る。ホテルの運営は、小田急電鉄の子会社UDSが担当。
同ホテルのコンセプトは「アンチゴージャス、アンチチープ」。客室にある家具やアメニティグッズは下階の店舗で販売している商品をそろえ、宿泊を通して無印良品の世界観を体験してもらい、ブランド力をアピールする狙いだ。宿泊料金は一泊1万4900円~5万5900円で、年間を通して同一料金で利用できる。
【レムプラス銀座/2019年12月開業予定】
眠りに特化したホテルブランド「レム」を展開する阪急阪神第一ホテルグループは、2019年12月に「レムプラス銀座」を銀座8丁目に開業する。「もっとよい眠りを」をコンセプトにしたレムホテルは、全室に高品質オリジナルベッド、レインシャワー、マッサージチェアを完備するほか、アメニティグッズやインテリア、香りにいたるまで眠りにこだわった快眠仕様が売りだ。
そんな「レム」のコンセプトを継承しつつ、さらに快適性を向上させた「レムプラス」は、ソファのあるダブルルームが中心となっており、ベッドサイズもクイーンサイズ(160センチ幅)にグレードアップ。客室数は238室で、宿泊料金は一泊1万3200円~となる予定。
銀座に「泊まる」という新たなスタイルを提案
ホテル業界の関係者によると、2020年の銀座エリアのホテルの客室数は約6000室に達し、2016年末(約3900室)から5割ほど増えると予測されている。では、なぜ多くのホテルが銀座に進出しているのだろうか。その狙いとして、一つは東京五輪やインバウンドへの対応、もう一つが、銀座という一大商業地でブランド力をアピールすることだという。
これまで銀座といえばショッピングや食事がメインで、「泊まる」という選択肢はあまりなかった。富裕層が買い物をする高級ブランド店や、成熟した大人を楽しませる飲食店は多くあるのに、そうした人たちが泊まりたくなるようなホテルが少なかったのだ。
そんな顧客層にもマッチする「銀座ステイ」という新たなライフスタイルを提案することで、それが結果的に銀座全体の名声を上げることにもつながる。銀座に泊まる人が増えれば、それだけ周辺の店への波及効果も大きくなり、銀座エリアのホテル進出による地域への経済効果は、年間487億円におよぶとも見られている。
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