終電車を逃して、やむなく自宅までタクシーに乗り、思わぬ出費を強いられた……。 目的地に到着するまでいくらになるのかわからない心配から、外の風景を眺めるどころか、着実に増えていくメーターの数字をずっとみつめていた……。 誰しも一度はそんな経験があるだろうが、タクシー運賃のしくみが大きな転換期にある。それは、アプリを使った配車システムで、事前に料金を決めてから乗車するシステムのこと。すでにアプリを使った配車システムは国外で大流行となっていて、日本国内でも早くも年内に稼働する見込み、といわれている。 いったいどんなしくみで、私たちの生活にどのような影響をもたらすか、早速、調べてみた。
この実証実験に際したアンケート調査によれば、約70%の利用者が「また利用したい」と回答しており、もっとも多かった理由は「値段が決まっているので安心」となっている。
さらに、利用者の特徴を見ると、それまでほとんどタクシーを使ったことがなかったり、または月に1~2回程度だった人が、積極的に利用している傾向があり、同時に20~30代で利用している人が全体の約45%に上っていることが分かった。
これは、配車アプリを利用した新サービスが、若年層を中心とした新しい顧客へ訴求する可能性があることを示している。
タクシー業界“復活”への、起爆剤となるか!?
今回の国交省の決定を、多くのタクシー会社が歓迎している。先に示したように、従来のメーターでの料金とほとんど乖離がないばかりでなく、その一方で利用者の増加が見込めることになるうえ、料金が不透明なことで利用を控えていた人々が、安心感をもって使えることになるといったメリットからだ。
また、運転者が道を知らなかったことで遠回りになってしまったとか、寝ている間にメーターが上がって想定外の料金を取られた、などといったタクシーと客とのトラブルも軽減される可能性がある。
さらに、タクシー会社が期待しているのは、新システム導入により配車アプリの普及が進むことだ。今は、タクシーに乗る客を獲得する方法は、おもに「流し営業」と呼ばれる方法で、ドライバーが運転しながら目視で乗客を探すというスタイル。これだと、長年の経験やスキルが必要なため、稼げるドライバーとそうでないドライバーに大きな差が出てしまう。
タクシーの配車アプリが普及すれば、タクシーは「流し営業」の必要性が従来よりも減り、経験の浅いドライバーでも稼げるようになる可能性がある。また、街中を流す不必要な空車タクシーが減ることが想定される。
つまり、タクシー会社としては売り上げが上がって、なおかつ事業効率が上がると期待しているというわけだ。
── 本来、どんな商品やサービスでも、購入する前や利用する前に、料金が示されているのが当然だ。
タクシーが長年にわたって到着時の後払いで済まされてきたのは、当局(国交省)による許認可制度で業界が守られてきていたから、という側面がある。消費者意識が高まった現代では、そうした行政からの庇護を受けた経営では立ち行かなくなっている。
利用者は費用対効果を厳しく見極めており、また無駄な時間を費やしたくないという意識も強くなっている。タクシーに乗ればどのくらいの時間がかかり、またいくらお金を使うことになるのかきちんと把握することは、そのまま消費活動の効率化に影響を与える。今や時間もまたお金なのである。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.17
2009.10.31