今日も、昨日に続いて、 調査結果の解釈についての話です。 調査結果の解釈において、 留意しなければならないのは、 「アンケート」や「グループインタビュー」(グルイン) などの一般的な調査手法は、 調査対象者の意識的・積極的な協力を得て 行われているという点です。
対象者の行動をありのまま把握する
「観察調査」
ならさほど問題はありません。
しかし、アンケートやグルインのような調査手法では、
調査結果が
「真実」
を必ずしも反映していない可能性があります。
以前ご紹介しましたが、
無料情報誌「R25」の開発に当たって、
若手ビジネスパーソン対象のグルインをやったら、
全員が「日経新聞」を読んでいると答えた。
そんなことがあるだろうかといぶかった藤井編集長が、
事前アンケートで「日経を読んでいない」と回答した層を
グルインに呼んで、
「日経読んでますよね?」
と聞いたら、やはり皆うなずいたそうなのです。
彼らは、意識的にウソをついたわけではないのでしょう。
そもそも、
「ビジネスパーソンなら日経くらい読んでいるべき」
という意識があった。
それで、他の調査協力者がいる前では、
「日経をちゃんと読みこなしてる理想の自分」
のつもりで、ついつい「読んでいる」と答えてしまった。
要するに「見栄を張った」ということですけど。
このように、調査結果には、真実とは異なる
「調査のウソ」
が隠れていることがあると言うわけです。
さて別の事例。
エステーのヒット商品「消臭ポット」
のテレビCM、
「支店長ズ」
はご存知ですよね。
本物の同社支店長が出演して
奇妙な振り付けの踊りを披露するこのCMは
ずいぶん話題を集めました。
実は、事前調査(クリエイティブテスト)では、
あのCMは一番人気ではなかったそうです。
(宣伝会議、2008.3.1)
しかし、エステーでは、
一番人気のCMを流すことをしませんでした。
エステーの宣伝部長、鹿毛康司氏によれば、
クリエイティブテストが行われている現場に足を運び、
調査協力者の様子を観察したところ、
8割の人は前のめりになり、緊張した面持ちで
CMが流される画面を凝視していたそうです。
そして、残りの2割の人は、
友達と一緒に談笑しながら画面を見ていました。
鹿毛氏が採用したCMは、
この残りの2割の人たちに評判が良かったものでした。
普段の生活で、
前のめりになってテレビを凝視する人は
まずいませんよね。
ゆったりとリラックスした姿勢で見る人が
ほとんどでしょう。
そんな自然な状況に近い2割の人に受けた
「支店長ズ」
のCMをエステーでは採用したというわけです。
鹿毛氏は、
「調査現場に来ない人は、
調査分析についての発言権なし」
というルールを決めているそうです。
上記のCMのクリエイティブテストの話は、
調査現場に立会い、調査協力者の様子を見たからこそ
的確な判断ができるということを示してますよね。
調査結果が記述されたレポートを見ただけでは
絶対にできない判断です。
調査のウソを見抜くコツは、
なによりもまず現場に立ち会うこと。
そして、回答内容だけでなく、
回答者の姿勢や表情も同時に情報として取り入れることが
調査結果の的確な解釈には不可欠だと言えます。
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2008.05.18
2015.07.10
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。