2019年の新たなトレンドとして、いま日本のジュエリー市場をにぎわせている「合成ダイヤモンド」。 天然ダイヤモンドと同じ化学式・結晶構造・輝きをもちながらも、価格は割安ということで、20~30歳代の若い世代にも購買層が広がりつつあるようです。 今年1月、東京ビッグサイトで開催された日本最大のジュエリー展示会「第30回 国際宝飾展」でも、「合成ダイヤモンド元年」といわれる2019年の日本市場を狙って、国内外の合成ダイヤモンド企業が続々と出展。宝飾マーケットの新ジャンルを築くムーブメントとして話題を集め、国内への流通も本格的に始まっています。 なぜ、いま合成ダイヤモンドが注目されているのか、また、天然ダイヤモンドとはどこが違うのか……。今回は、日本で人気が高まる合成ダイヤモンドの市場背景や、今後の消費マーケットの動向に迫ります。
さらに近年、天然物と同じ輝きをもつ高品質な合成品が登場したことで、市場に新たなムーブメントが巻き起こりました。紛争を起こさない・環境を破壊しないなどの観点から、エシカル志向(環境や社会に配慮するライフスタイル)の海外セレブやミレニアル世代の間で、よりクリーンな合成ダイヤモンドを支持する動きが急速に広まっていったのです。
名門ブランド「デビアス」の参入で市場が一気に拡大
そうした中、昨年9月、世界最大手のダイヤモンドブランド「デビアス(英国)」が合成ダイヤモンド部門を立ち上げ、世界中の宝飾業界で大きな話題となりました。デビアスといえば「A Diamond is Forever(ダイヤモンドは永遠に)」という企業コピーが有名ですが、国際市場をけん引する名門ブランドの新たな展開によって、合成ダイヤモンドはその存在感を一気に高めることになったのです。
海外市場の拡大とともに、国内の市場も本格的に動き始めています。昨年10月には、京都の老舗ジュエリーメーカー「今与(いまよ)」が、日本初の合成ダイヤモンドブランド「SINCA(シンカ)」を設立。シンプルなデザインの指輪やネックレス、イヤリングなどを展開し、日常使いのアクセサリーとして購入する若い女性や、婚約指輪を購入するカップルもいるそうです。
希少価値のない合成ダイヤモンドは淘汰される?
では、国内外で新たなムーブメントを巻き起こした合成ダイヤモンド市場は、今後どうなっていくのでしょうか。業界内ではさらなる市場拡大に期待が寄せられる一方、将来的なマーケットの展開は厳しいという声も聞かれるようです。
まず、「希少性」という宝石としての価値を満たしていない合成ダイヤモンドは、今後数年で宝飾市場から淘汰されていくという見方です。数十年前にもルビーやサファイアなどの合成石が登場して話題になりましたが、希少性がないことから存在価値が薄れ、いまや市場でほとんど見かけなくなったといいます。どれほど天然の宝石と同じ輝きをもっていても、希少性という「宝石の価値=永遠の価値」がなければ、合成ダイヤモンドも合成のルビー・サファイアと同じ道をたどるのではないかというのです。
また、合成ダイヤモンドの生産コストは技術開発とともに年々下がっており、買い取り価格もここ3~4年で半分程度にまで下落。安く購入できるのは良しとしても、人間の心理として「安価なものは価値が低い」と考えがちです。そうした側面から、今後は合成物と天然物の差別化が進み、むしろ天然物の価値が上がっていく可能性もあるといいます。
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