人生100年と言われるものの定年を一つの人生のターニングポイントとして意識する人は多い。食べるための仕事から自己実現のための「ライフワーク」を模索する人も多く、改めて自分の人生を見直す機会になるようだ。 一般に自己実現への成長モデルとして例にだされる「マズローの5段階欲求説」だが、この順序に捉われる必要はないのではないか。人は幸せになるために、欲求を満たしたいと思う。しかし、マズローの説のように下位の「食べるための欲求」などを超えて、自己実現欲求を強く持つ人は意外に多いものだ。 改めて幸福感の質を段階的に問うと、物質的な欲求より愛や理想、生きがいなどに、より精神的な充足を求める人が多い。5段階をたどらなくても、人はもっと自身の人生を肯定したい存在。 定年という一つの人生のポイントを意識して、心の奥で何かが騒ぎ出すなら、そこから目をそらさずに向き合うと、何に気づけるだろうか。
「好きなことを仕事にする」というのは、そんな彼らに少なからず誤解も与えていますが、やりがい、自分らしさ、ひいては社会貢献になる仕事を望む学生は多いでしょう。
一方で、自己実現欲求の手前、たとえばマズローの4段階目の「承認欲求」を満たすためにSNSで「私、すごいでしょ!」をアピールをする人、意識高い系の人も見かけることがあります。
マズローの欲求でなくても、最近「承認欲求が強い人」という言葉をよく聞くようになりました。人から承認されることの意味は、本来、人に「尊重される」という意味の方が重要なことです。
人から認められることを強烈に欲する心理には、自分で自分を認めていない傾向があります。それは、自分で自分を愛することが難しいために人の承認を得ることで自己愛を満たそうというニーズです。 つまり「私を愛して、愛して!」と強烈にアピールしているのと同じです。
承認を求めてばかりで、尊重されているという実感が得られないなら、4段階から5段階への移行にはなりにくいです。なぜなら、尊重されている実感を得ることは、他者からの愛を十分に受け取るプロセスだからです。それを受け取れて、ようやく他者に与える余裕ができるのですから。
「なりたい自分になった」と主張する人の中には、一見、自己実現しているように見えていても、隠れたニーズが「私を愛して」の人が多く、それが「本当になりたい自分」なのか、「人に承認されるための虚像」なのか、一般には見分けがつきにくいようです。
◆ 欲求と幸福の関係
ところで、「欲求」とは何なのでしょうか。
欲求があれば、それを満たそうとします。満たされた時、人は幸福を感じます。言い換えれば、人は幸福になりたいために欲求を満たそうとします。
「お腹が空いた、おいしいものを食べたい」という欲求は、1段階目の生理的な欲求に違いありませんが
食べた時、おいしいご飯に作り手の愛を感じ、美味しさもひとしおだった場合、それは3段階目の「愛と所属」の欲求を満たしているとも言えます。
また、「大切なあなたのために特別に腕を振るったという料理」をいただいたなら、自分がとても尊重されたと感じ、4段階目の欲求が満たされるかもしれません。
これらのことは各段階を踏んでいなくても、そんな欲求が満たされた「幸せ」を感じるでしょう。
でも、飢えを満たしたいだけの人は、条件が一緒でもおそらく3段階目や4段階目は満たされません。
これらは、5段階のプロセスを順に追わなければ、高次の欲求を求めないということよりも、人はどのレベルの幸せを望むのか…、どの欲求レベルを満たしたいか…によると思われます。
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2019.06.18
2015.07.17
一般社団法人フラワーフォトセラピー協会 代表理事
こんにちは。内藤由貴子です。花の写真でストレスを作る感情を分析、心理診断を行い、さらにその解消まで行うフラワーフォトセラピーのセラピストです。INSIGHTNOWでは、異色な存在かもしれませんね。このセラピーの普及のため、一般社団法人フラワーフォトセラピー協会を設立、講師の養成、セラピストの紹介を行っています。自身、色を使うオーラソーマ®をはじめ、セラピストとして16年あまりのキャリアです。このINSIGHTNOWでは、こころをケアに役立つようなコラムを書かせていただきます。よろしくお願いいたします。