人生100年と言われるものの定年を一つの人生のターニングポイントとして意識する人は多い。食べるための仕事から自己実現のための「ライフワーク」を模索する人も多く、改めて自分の人生を見直す機会になるようだ。 一般に自己実現への成長モデルとして例にだされる「マズローの5段階欲求説」だが、この順序に捉われる必要はないのではないか。人は幸せになるために、欲求を満たしたいと思う。しかし、マズローの説のように下位の「食べるための欲求」などを超えて、自己実現欲求を強く持つ人は意外に多いものだ。 改めて幸福感の質を段階的に問うと、物質的な欲求より愛や理想、生きがいなどに、より精神的な充足を求める人が多い。5段階をたどらなくても、人はもっと自身の人生を肯定したい存在。 定年という一つの人生のポイントを意識して、心の奥で何かが騒ぎ出すなら、そこから目をそらさずに向き合うと、何に気づけるだろうか。
◆定年前に ライフワークの模索を始める人たち
今年になって、定年間近で早めに退職し、
今までと違う働き方をしている方に何人かお会いしました。
定年近くまで、家族を養い食べるために組織で仕事したけれど
「もういいでしょ、本当に働けなくなる前に、違う働き方を体験してみて
続けてみたいものを探したいですから」といって契約社員で働き始めた方、
これまでのキャリアを元に、起業の準備中の方もあり、一方で籍は今まで通りで、今後の生き方を模索している方もいらっしゃいました。
定年が視野に入るこの時期を人生のターニングポイントと捉えざるを得ないのでしょう。
さて、「食べるための仕事」を「ライスワーク」とやや自嘲気味に語り、生涯をかける仕事「ライフワーク」への羨望を抑えきれない人もいます。 その中には、ライフワークに専念できないもどかしさを抱える人、あるいは、そんな仕事に出会えていない焦りを隠さない人も…。
「食べるための仕事」と「生きがいとしての仕事」の対比でしたが
これは衣食住が足りたら、次の段階へ行けるということとは、ちょっと違います。
◆ マズローの5段階欲求説の、自己実現欲求にある矛盾
よく引き合いに出される「マズローの欲求5段階説」をご存じの方は多いでしょう。
欲求の5段階、ピラミッドの頂上の「自己実現欲求」に至るには、
4段階の「欠乏欲求」を満たしていく段階がある、という説です。
先のライスワークなど、1段階目の生理的欲求と2段階目の安全の欲求を満たす段階です。
その後、3段階目 所属と愛(社会的)の欲求として、社会的な役割や他者に受け入れられること、
さらに4段階目を承認(尊厳)欲求として、人から尊重されるプロセスを経て、
ようやく自己実現、つまり自身の生きる意味に目覚めて「自分がなりうるものになりたい」欲求が欲求の頂点に置かれています。
しかしこれは、マズローの唱えた一つの可能性、指標としてはあり得ても、すべて正しいかというと、個人的には非常に違和感を覚えます。
なぜなら 実際には「食うため」にバランスをとりつつ、自己実現欲求は、「食うため」に就いた仕事においてさえ、同時並行的にどうにか自己実現できないかと求めるので、必ずしも別段階ではないからです。
私もその一人でした。
また、これまで出会った相談者の多くの方が、そうでした。 だから、現実とそのギャップが苦しく悩むわけです。
まだ自分で稼げない学生でさえ、漠然とでも何かしら自己実現欲求モデルのようなものがあり、食うに困らず安全欲求を満たす意味での「安定」だけを求めて、就活する方が少ないと感じます。
次のページ◆ 欲求と幸福の関係
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2019.06.18
2015.07.17
一般社団法人フラワーフォトセラピー協会 代表理事
こんにちは。内藤由貴子です。花の写真でストレスを作る感情を分析、心理診断を行い、さらにその解消まで行うフラワーフォトセラピーのセラピストです。INSIGHTNOWでは、異色な存在かもしれませんね。このセラピーの普及のため、一般社団法人フラワーフォトセラピー協会を設立、講師の養成、セラピストの紹介を行っています。自身、色を使うオーラソーマ®をはじめ、セラピストとして16年あまりのキャリアです。このINSIGHTNOWでは、こころをケアに役立つようなコラムを書かせていただきます。よろしくお願いいたします。