どんな街にもあたり前に店を構えていた書店が、恐ろしいくらいのスピードでいま次々に倒れている。 インターネットの普及で深刻な打撃を受けた業界の一つが書店といえるが、米国国内でも同様にリアル店舗が閉店に追い込まれている。その現象を「アマゾン・パニック」と呼び、その小売店の変転数は昨年だけで1万2000店舗を超え、チェーンストアも大量閉店に追い込まれているという。 一方の日本でも小売店が閉店に追い込まれているが、書店も例外ではない。が、しかし、懸命に未来に目を向けて頑張っている書店もある。ユニークな作戦で生き残りを図っている書店を紹介しよう。
全国から注文が殺到した、逆転のシステム「一万円選書」
ほかにも、注目すべきリアル書店の野心的なチャレンジはある。
北海道の砂川市にある小規模書店「いわた書店」が、このところ大いに話題を集めている。読者から本の注文を受け付けるのではなく、1万円の予算の範囲内で、店主の岩田徹氏が、その読者にふさわしい本をセレクトしてくれるという、逆転のシステムを採用した「一万円選書」だ。
あらかじめカルテと呼ばれる、読者のこれまでの読書歴や個人的な嗜好、興味、価値観などを記した情報を共有し、それを岩田氏がきっちり吟味して、その読者にふさわしい本をラインアップして提案する。もちろん、気に入らなかったり、もうすでに読んでしまっていれば、リストからそれを外してもらうことも可能だ。多くの読者は、まったく知らない本を提案されたり、そもそもこれまで興味のなかったジャンルの本を提案されて、驚くことが多いという。これまで何度かテレビなどで紹介されるうちに話題となり、今では数千件のオーダーがあり、抽選で通らないと、このシステムには参加できないほどだそうだ。
この書店、本当に街の片隅の小さな書店さんだ。アイデアしだいで生き残るチャンスはあるということか。
その他の、ネット時代に対抗するリアル書店のチャレンジ
代官山蔦屋に代表されるブックカフェの展開も、ネット時代に対抗するリアル書店のチャレンジとして注目を集め続けている。
代官山蔦屋は、オープン当初それまでの書店のイメージを根本から覆したとして、大いに話題になった。ハイソなイメージの代官山に、3棟にわたる大型店舗。それぞれの棟はきっちりとしたジャンル分けがなされ、客の好みに応じてじっくり本が探せるようになっている。店内のあちこちには座り心地のよい椅子が配置さり、そこでゆったり本を読むことができる。しかも、カフェ、ダイニング、夜にはバーまで併設されており、とにかく一日いても退屈しないような造りになっている。
この店は、オープン後8年が経過しているが、ネットで本を買う層とはあきらかにちがった本好きを集める書店として、完全に定着している。インターネットで本を探すよりもリアル書店で本を探すほうが楽しいという読者が、確かにいるということを証明した書店なのだ。
この代官山蔦屋の成功をきっかけに、全国に次々といわゆるブックカフェが誕生し、リアル書店のイメージを変えるきっかけにもなっている。
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