振り子の一端に「成功のキャリア」があり、また別の一端に「自己防衛のキャリア」が生じる。この2つの極の間の適当なところで折り合いをつけていくというのではなく、両者を止揚したところに「健やかさのキャリア」があります。この「健やかさのキャリア」こそ、次代の大切なキャリア観として育まれるべきものではないでしょうか。
実のところ、「成功のキャリア」にしても「自己防衛のキャリア」にしても、それによって到達できるのは、このフェーズⅡの小さな健康です。
成功や自己防衛を超えて、フェーズⅢの大きな健康を得るためには、創造や貢献に軸足を置いた活動に邁進することです。そして自分という能力的存在が十全に開いているなと感じられるとき、それが最も強く安定した状態であり、長きキャリアの道のりを渡っていける源泉力となります。
このように「健やかさのキャリア」という観点は、これからの時代にとても大切になってくるものだと思います。健やかであるとは、なにも成功や自己防衛を否定するものではありません。何か自分の満たしたい価値や在り方があって、その実現に邁進する過程で、結果的に成功が手に入ってくる、あるいは、自然のうちに心身が鍛えられ自分を守ることにつながってくる、そういうとらえ方です。
事業経営の分野においても、まさに「健康経営」が叫ばれています。企業組織における長足の成長と存続を考えた場合、従業員に対し「成功のキャリア」をあおるよりも、「健やかさのキャリア」とともに実現していくよう努めるほうが賢明な方向性のように思えます。「健やかさ|well-being」───働く個にとっても組織にとっても、追求するに値する価値です。
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2009.10.27
2010.03.20
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。